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++第三話 ゼロのルイズ①++ 花京院典明が目覚めて、初めて目にしたものは昨晩ルイズが投げてよこした下着だった。 横に転がっているそれから視線を外し、起き上がる。 隣にあるベッドではルイズが寝気を立てている。子供らしい、あどけない寝顔だ。 「やっぱり夢じゃないのか」 心のどこかで期待していたことに裏切られる。やはり現実だった。 学生服の乱れを直し、花京院はルイズを起こしにかかった。 肩を叩いてみるが、起きない。 今度は枕を取ってみるが、起きない。 毛布をはいだところで、ようやくルイズが目覚めた。 「な、なに! なにごと!」 「朝だ。ルイズ」 「はえ? そ、そう……って誰よあんた!」 ルイズは寝ぼけた声で怒鳴った。顔がふにゃふにゃで、まだ眠そうだ。 「花京院典明。君の使い魔だ」 「使い魔? ああ、使い魔ね。昨日召喚したんだっけ」 ルイズは起き上がると、あくびをした。それから花京院に命じる。 「服」 椅子にかかった制服をルイズの側に置いた。 だるそうに寝巻きを脱ぎ始めるルイズに背中を向ける。 「下着」 「自分で取らないのかい?」 「なんで取る必要があるのよー」 寝起きのせいか間延びした声で反論する。 ここでもめるのも面倒なので、素直に従うことにした。 「そこのー、クローゼットのー、一番下の引き出しに入ってる」 下着を適当に取り出し、後ろに放り投げた。 ごそごそとルイズが着替える音がした後、 「服着せて」 「それも僕が?」 「あたりまえでしょ」 花京院はややうつむき加減で振り向く。 彼も一応思春期の少年である。多少なりともそういう情はある。 さすがに直視するのには抵抗があったのだが……ルイズの身体を見て、すぐに元の表情に戻った。 ルイズの身体はまだまだ未発達だった。いくら下着姿だといっても、女らしい膨らみが全然ないので、焦ることも意識することもない。 着替えを手伝っているうちに、少女の着替えを手伝っているのか、少年の着替えを手伝っているのかさえ曖昧になってきた。 最後にマントの紐を締め、着替えは終了した。 ルイズと部屋を出ると、丁度隣の部屋のドアも開いた。 似たような木のドアが開き、現れたのは燃えるような赤い髪の少女だった。 ルイズより背が高く、花京院より若干低めの身長で、むせるような色気を放っている。 ブラウスのボタンを上から二つ外し、胸元を覗かせている。褐色の肌はいかにも健康そうだった。 身長、肌の色、雰囲気、胸の大きさ……、全てがルイズと対照的だった。 彼女はルイズを見ると、にやっと笑った。 「おはよう。ルイズ」 ルイズは顔をしかめ、嫌そうに挨拶を返した。 「おはよう。キュルケ」 「あなたの使い魔って、それ?」 ルイズがうつむいて黙り込むと、キュルケはそれを肯定と受け取ったようだ。 「あっはっは! 『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出すなんてあなたらしいわ。さすがはゼロのルイズ」 ……ゼロ? 花京院がルイズに目をやると、ルイズの白い頬は朱に染まっていた。 「うるさいわね」 「あたしも昨日召喚したのよ。誰かさんと違って一発で成功だったけど」 「あっそ」 「どうせ召喚するならこういうのがいいわよねぇ~。フレイムー」 キュルケがそう声で呼びかけると、キュルケの部屋からのそのそと赤い何かが這い出てきた。 それは巨大なトカゲだった。全身真っ赤で、尻尾の先には小さな炎が灯っている。 むんとした熱気に、花京院は顔の前で手を振った。 「それは……?」 「もしかして、あなた、火トカゲを見るのは初めて?」 「ああ、初めてだ。しかし、鎖につながなくて大丈夫なのかい?」 「平気よ。あたしから命令しない限り襲ったりしないわ」 キュルケは顎に手をそえ、色っぽく首を傾げる。 悔しそうにトカゲを見ていたルイズは聞いた。 「これってサラマンダー?」 ルイズの顔を見て、キュルケは勝ち誇ったような笑みを浮かべた。 「そうよー。火トカゲよー。しかも見てよこの尻尾。ここまで鮮やかで大きい炎の尻尾は、間違いなく火竜山脈のサラマンダー。 とても値段なんかつかないわよ」 「そりゃよかったわね」 「素敵でしょ。あたしの属性にぴったり」 誇らしげに胸を張るキュルケに対抗してルイズも胸を張るが、全く勝負にならない。 ルイズをからかうのに満足したようで、キュルケは花京院に目を向けた。 「あなた、お名前は?」 「花京院典明」 「カキョウイン? 変な名前ね。ふーん」 キュルケは品定めするように花京院を見つめる。 「まあいいわ。じゃあ、お先に失礼」 赤い髪をかきあげ、さっそうとキュルケは歩き去っていった。 キュルケがいなくなると、ルイズは小さな肩を震わせた。 短い付き合いでも花京院はルイズの状態がわかった。 怒っているのだ。 「くやしー! なによあの女! 自分が火竜山脈のサラマンダーを召喚したからって! ああもう! それなのに私はあんただし!」 「気にしなければいいじゃないか」 「そういう問題じゃないの! メイジの実力を見るには使い魔を見ろって言われてるぐらいなのよ! それなのに……ああもう!」 大げさにうなだれるルイズ。 それを呆れながら眺めて、ふと思い出した。 「ところで、『ゼロ』って君のあだなかい?」 ぴくん、とルイズの肩が上がった。 怒りと不安がないまぜになったような表情を浮かべている。 「な、なんであんたがそれを?」 「さっき彼女が言ってたじゃないか」 「ああ、そうだったわね。ゼロはただのあだなよ」 「でも、どうして?」 「あんたが知らなくてもいいことよ」 急に突き放すような口調でルイズは言った。 頭は悪くは無さそうだったので、身長とか胸のことだろうな、と見当をつけた。 怒らせる必要もないので、その話題はそこで終わらせることにする。 「それより、今からどこへ行くんだ?」 「朝食を食べに行くのよ」 マントをなびかせながらルイズは歩き始めた。 To be continued→
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「もう!あんたも気合入れなさいよ」 一つでン十万はしそうなアンティークが並んだ部屋で、甲高い声が深夜の学生寮を振るわせる 声の主はルイズであり、少し殺気が入った視線の先には召喚した使い魔―――『ペットショップ』の姿 何故にルイズが叫んでいるのだろうか? 時間は多少遡る 「使い魔の目は主人の目、使い魔の耳は主人の耳ね。うふふふふ」 ちょっと逝っちゃった笑顔を浮かべながらベッドに座るルイズ 使い魔の視覚や聴覚で得た情報を、その主人であるマスターも得る事が出来ると教師から聞いた その説明にルイズはちょっと惹かれたが、サモン・サーヴァントでマトモな使い魔が出てくるとは期待していなかった だが、ルイズは召喚に成功した!故に彼女は試してみたかった。使い魔を手に入れたら誰だってそうするだろう、ルイズだってそうする。 「ちょっとやってみよ」 ルイズの軽い言葉、だが。これから長い長い時間が経つとは誰も予想してなかった。と言っても部屋にはルイズとペットショップしか居ないが 1時間――――――― 「ぐぬぬぬぬぬぬ」 2時間――――――― 「はぁぁぁぁぁぁ」 3時間――――――― 「・・・うぉりゃぁ」 4時間――――――― 「―――――ぅあ」 5時間――――――― 何回も何回も試したが、使い魔が何を見て何を聞いてるのか欠片も分からないルイズ。 ここで冒頭の「もう!あんたも気合入れなさいよ」である 駄メイジなルイズに根本的な原因があるのだが、連帯で責任を背負わされては使い魔も溜まった物ではない。 「先生はとても簡単って言ってたのに!」 レビテーション等の『とても簡単な魔法』すら失敗する自分の不名誉な二つ名『ゼロのルイズ』の称号を完璧に忘れているとしか思えないセリフを叫ぶ それから少しの間ペットショップに当り散らしたりしていたが、さすがに気力の限界が来たのか。ベッドに横になるルイズ 「ご主人様の睡眠を邪魔したら承知しないんだからね!・・・zzzz」 と、又しても理不尽なセリフを吐いてから明かりを消して、のび太並のスピードで夢の世界に直行した。 マスターが眠ったのを確認してから、ペットショップは器用に足でドアを開けて廊下に出た 鳥である彼には暗闇は天敵であり、一寸先も見渡せないはずだが。『もう一つの感覚』を持つ彼には暗闇など物の数ではない 彼の頭に浮かぶのはルイズの最後の言葉『睡眠を邪魔するな』 (マスターの命令を遂行しなければならない) (守らなければならない) (■さなければならない) (やらなければ) と、そこまで考えて突然雷鳴が走るように思考に別の異物が混じる (マスター?)(こいつは違う)(命令は違う)(ここは違う)(早く戻らなければ)(DI・様の元へ) 彼は思った。まただ、また頭に疑問が浮かんだ 何かが違う、だが、それが何なのか彼はわからない パズルが完成している、しかし、そのパズルのピースが本来の物とは全くの別物になっているような―――辻褄の合わない感覚 最後の思考が一番大事な物だと感じたが、深く考える前に命令を遂行する事が重要だと彼は結論付けた そして朝に事件は起きた 時間は朝 学生寮の廊下を二人の女が歩いている 「ルイズは寝坊かしらねぇ」 「・・・・・・・・・・・」 赤い髪をした大きい方はキュルケ。 青い髪をした小さい方はタバサ。 キュルケの後ろに居る火竜山脈のサラマンダーを見れば分かるが、どちらもメイジとしての腕もかなりの者。 タバサなんてシルフィードなる青いドラゴンを使い魔として使役している。 そんな彼女達が何故に歩いているのかというと、授業に出て来ないルイズを起こしに行くからである。 その行為は親切心からではなく、わざわざライバルから起こされるルイズの悔しそうな顔を見たいが為。 ルイズの顔を想像して笑みを浮かべるキュルケをタバサは呆れたような顔で見る、が、幸いな事にキュルケは気付いていない 目の前にはルイズの部屋のドア、ルイズの使い魔がその脇に見える 「使い魔より起きるのが遅いなんて、ルイズは本当に駄目ね」 そんな事をぶつくさ言いながらドアを開けようするキュルケ ―――次の瞬間キュルケは服をタバサに思いっきり引っ張られた! 「ちょ、何すんのよタバ「ドゴォ!」!?」 不可思議なタバサの行為に抗議しようとしたキュルケ。だが、顔の直ぐ傍にいきなり氷柱が生えては黙らざるをえない 長さは1メイル程で、壁を薄紙のように突き破っている。こんなのが顔に当たったら普通に死ぬ 慌てて発生源を見るキュルケ、するとそこには―――― 「グガガガガガッ!!!」 得体の知れぬ冷気を放ちながら翼を広げるルイズの使い魔の姿 実践経験が無いキュルケとタバサにも感じられる程の殺気を放っている 泣く子も黙るほどの殺気を放ちながら、ペットショップは主人の命令『睡眠を邪魔する者は即座に抹殺せよ』を遂行するッ! 羽ばたくペットショップの周りに氷柱が瞬時に生成!そして半秒の間も無く発射! 『それ』はタバサの得意とする『水』『風』『風』の攻撃呪文、『ウィンディ・アイシクル』に酷似していた しかし『ウィンディ・アイシクル』より弾の数は少ないが、大きさと速度は全くの別物! 勿論その氷柱が放たれるのを黙ってみているキュルケでは無い 「ファイヤファイヤファイヤファイヤファイヤファイヤァァァァッ!」 自分に当たりそうな物だけを見極め『火』*1の呪文で叩き落すッ! 外した物はフレイムの火炎が補助! 外れた残りの氷柱は、ドゴゴゴゴゴッ!、と。 氷柱がぶつかったとはとても思えない音を立てながら窓を粉砕し床に穴を開ける (トライアングル・・・・・・いや!スクゥエアクラスのメイジ並じゃない、この鳥!) 冷や汗を流すキュルケ、だが一瞬の停滞も無しに次の動作に移る 「タバサッ!!」 「エアハンマー」 キュルケの言葉に阿吽の呼吸で放たれるタバサの魔法! 杖から放たれる空気の槌。通常は不可視の波動であるそれを『もう一つの感覚』で感知して回避行動を取ろうとするペットショップ しかし、タバサの狙いはルイズの使い魔では無かった! ドゴォン! 轟音と共にルイズの部屋の扉が粉々に砕けて吹っ飛ぶ キュルケとタバサの狙いに気付き、急いで氷柱を発射しようとするペットショップ! だが、回避行動を取ろうとした時間のロスが、タバサとキュルケをルイズの部屋に入り込ませる隙となってしまった 部屋に侵入者を入り込ませてしまった!その事実に激するペットショップ 「キョオオ―――z______ン!!!」 聞く者を振るわせる声を一発かました後、彼もルイズの部屋に飛びこんで行った 「ルイズゥゥ!!!!!」 部屋に入った瞬間、怒声を張り上げるキュルケ ルイズの使い魔に殺されかけたのだから、その行為も自然な物だ。 しかしルイズを見付けたと同時にキュルケは腰砕けになりかけた 何故か?それは 「zzzzzzzz」 何とも幸せそうな顔でルイズが寝ているのである! 部屋の直ぐ側であんな爆音が響き、ドアを物凄い勢いで吹っ飛ばされたのにまだ寝ている! (こいつはグレートね) と、キュルケは思考停止しかけたが 「キュルケ。鳥が来る」 タバサの少々焦ったような声で通常の思考を取り戻す キュルケが振り返ると、あの鳥が部屋に入ってくるのが見えた だが、無防備なマスターのすぐ近くに居るのだから、あの使い魔も無茶は出来ないだろうと予測するキュルケ その思惑通りに、使い魔はこっちを睨むだけで手出しをして来ない だけどまだ安心は出来ない 「あたしはルイズを起こすから、タバサ見張っててくれない?」 鳥の注意を相棒に任せると ポカッ! 使い魔に殺されかけた分のお礼も込めて、ルイズの頭を杖で強めに殴った 突然魔法の才能が覚醒した私は、ライバルのキュルケと決闘して完膚なきまでに叩きのめした 「うーん」 土下座するような体勢で気絶しているキュルケ、私はそんなキュルケの頭に足を乗せて高笑いをしていた 幸せの絶頂―――ボカッ! 「あ痛ッ!」 突然の痛みに意識が覚醒した。頭を押さえて悶える私 涙が出てきそうな目を開けると前方に笑っているキュルケが見えた 「あら?良い音がするじゃない、頭の中身も『ゼロ』じゃなくて良かったわね」 あまりにもあんまりな言い草に、怒りが許容量を突破する。『プッツン』と言うやつだ 「あ、あああああ、あんたッ!何で勝手に入ってきたのよ!それに人の頭を殴るなんて何考えてるの!?」 怒りで震える口を何とか動かしながら叫ぶ。 すると、キュルケはあからさまに呆れてるような溜息を突いた。激しくムカツクわね 「授業に出てこないアンタを起こすよう先生に頼まれたのよ」 あれ、私寝坊しちゃったのか・・・・・・だけど殴って起こすのは無いわよ!常識的に考えて! と抗議しようと思ったが、周囲を見回していた私は気付いた、ドアが粉々になってるッ!? 「いきなりアンタの使い魔に襲われちゃってね、正当防衛ってやつよ」 私の視線から気付いたのか、尊大に言い放つキュルケ。私は口をパクパクさせる事しか出来ない 「それから廊下の窓や床もアンタの使い魔が滅茶苦茶にしちゃったから、後でちゃんと弁償しときなさいよ?」 使い魔の責任は主人の責任よ~、等と言いながらタバサを連れて部屋から出て行った・・・・・・わぁ、私凄く腹立ってる! 怒りに突き動かされるまま、私は近付いて来たペットショップに叫んだ 「ペットショップ! あんた、ご飯抜きだからね!」 マスターと何か話をしていた侵入者共は出て行った 追い駆けて『始末』するより先に。マスターの安全を確認するため私は近寄った すると、いきなり 「ペットショップ! あんた、ご飯抜きだからね!」 マスターの怒声。マスターは怒っている。何故だ? 「いきなりキュルケとタバサを襲うなんて何考えてんの!?それに廊下やドアを滅茶苦茶にするなんて正気!?」 どうやら私はマスターの友人を攻撃してしまったようだ。なるほどマスターが怒―――――(違う)(マスターなら)(・IO様なら) 「・・・・・・・・・ョップ?ペットショップ聞いてんの?」 目の前にはマスターの顔――何処と無く不安そうな顔で私を見ている 「まあ、いいわ。罰としてご飯抜くんだから、ちゃんと反省しなさいよ」 先程の思考が何なのかはもう思い出せない、無理に思い出そうとしても思考の一部に靄が掛かったような感じがして判別できない ―――――とても、とても重要な事だったような気がする、私の存在する意義に関わる程 「ペットショップ」 私は考え込んでいたが、マスターの声で我を取り戻した 寝巻きから制服に着替えたマスターが手を振る。「着いて来い」と言っているのだろう。 私はマスターの元に飛んでいった 廊下の惨状を目にしたルイズが大きな溜息を突き 弁償として割と少なくない額の金を払う事となったのは関係無い蛇足である
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前ページ次ページゼロのロリカード アーカードとワルドが互いに睨み合っている中、突如周囲から魔法がとんだ。 SR-71の直撃を免れたメイジ達が次々と魔法を放ったのである。敵と思しき少女に一人が攻撃しだすと、それは連鎖的に広がった。 恐らく本人たちもあまりわけがわかっていない。状況を理解し切れていないが、それでも魔法は浴びせられ続けた。 少女の小さな体躯は引き裂かれ、焼かれ、粉々になりながら吹き飛ぶ。 しかし四散した肉片はたちまち霧のように変化し、生き物のように動き始める。 黒い霧は影となり、影は腕となり、腕は枝のように分かれて全方位に広がる。 それは人間や竜を問わず生物を一瞬にして貫き、砕き、潰した。 レキシントン号に起きた異変を確かめるべく、哨戒を中断して戻ってきた竜騎兵達も、空中で兵士と竜共々刺し貫かれる。 瞬く間にレキシントン号の甲板上は死体に溢れ、もはやその中で生きている者はワルドだけとなった。 「前菜を食い散らかすのは、もうこの辺でいいだろう」 「お・・・おォぉぉオォオオオオオオッッ!!」 ワルドは雄叫びをあげた、己を奮い立たせる為の叫び。目前の化物への畏怖が、分泌されたアドレナリンで麻痺する。 続いてワルドは詠唱、『偏在』を使って数の優位に立つ。 それは最低条件、化物相手にするのだ。真正面から相対するのだけは避けうるべきことである。 間髪入れず、偏在達は魔法を四方からアーカードに叩き込む。本体のワルドも『ライトニング・クラウド』を放った。 炎上で発生し続ける煙が漂う中、アーカードの姿はいつの間にか消えていた。 魔法が命中したところまでは確実に視認していた、魔法を吸収する面倒な剣も構えていない。 (一体どこに消えた!?) 必死に姿を確認しようと目を凝らしていると、突然背後に気配を感じた。 すぐにワルドは振り向きざまに右手に持ったレイピアを気配のする方向へと突き出す。 しかし気付けばレイピアは虚空を貫き、アーカードの左手がレイピアを持ったワルドの右腕を掴んでいた。 「悲鳴をあげろ、豚の様な」 アーカードは掴んだワルドの右腕をグイと引っ張った。と、同時に聞こえたのは音である。 何かがちぎれるような音。そして体の芯、脳髄の奥まで響くような鈍くも・・・軽い音。 その方向に自然と視線が向かう。見ると右足の膝が逆の方向に曲がり、筋繊維がブチブチと悲鳴をあげていた。 ピンク色の肉がこびりついた白い骨が露出し、赤い鮮やかな血が飛び散っていた。 「ひぎぃぃィィいイいイイイイイィャァアアあアあアアッッ!!??」 あまりの光景にワルドは絶叫した。反射的に『ウインド・ブレイク』を放ち、アーカードとの距離が開く。 それは鍛えられた戦士としての反応か、兎にも角にもアーカードとワルドの間合いは開いた。 体制を立て直そうにも、バランスの取れなくなったワルドはその場に崩れ落ちる。 同時にレイピアも右手から離れ、地に転がった。腕に・・・力が入らない、掴まれた時に粉砕されていたのだ。 まともに立つことすらできなくなったワルドは、もはや坐して死を待つだけとなった。 「しょせんこんな物か、小僧」 大きく嘆息する。目の前には戦意の喪失した・・・ただの、ただの人間がいるだけ。 人間は脆い。腕が砕け、足が折れただけで、もうまともに動くことなどできやしない。 それでも魔法で応戦するのを期待していたが、もう目の前の人間にそれを期待するのは無理なようだった。 エサ 「さようならだ、ワルド。お前は犬の肉だ」 アーカードは微塵の感慨なく言った。その言葉に応じるかのように黒犬獣バスカヴィルは咆哮をあげ、ワルドをその顎門で噛み砕く。 ワルドは咀嚼され、飲み込まれ、呆気なく、ボロ雑巾のように死に逝った。 「さて・・・と」 アーカードは艦内に残った人間を鏖しにすべく、歩き出した。 ◇ 燃えるタルブの上空、トリステイン軍とアルビオン軍が鎬を削っていた。 目的は敵を倒す為ではなく、時間を稼ぐこと。しかし食い下がるだけの戦にも拘わらず、トリステイン軍の損耗は激しかった。 この調子でいけばゲルマニアからの援軍が到着するまでに、嬲り尽くされ負けるのは想像に難くない。 それだけアルビオン軍には勢いがあり、それほど戦力差は明らかであった。 「殿下、大丈夫ですか?」 アニエスに呼ばれ、アンリエッタはいつの間にか震えている自分に気が付く。 目の前で起きている戦争。自分の命令で、兵は戦い死んでゆく。さらに相手を殺している。 英断・・・なのかもしれない。このままいけば犠牲は増えるばかり、そして負けるのも・・・・・・目に見えている。 ならば、そうなる前に降伏するのも―――。 「霧が・・・」 最初に気付いたのはアンリエッタの隣にいたルイズだった。 雲一つない空で幻獣や魔法、砲弾が飛び交い舞う中。そして日光が照らす中、不自然に発生した霧。 次第に濃くなりつつある霧にアンリエッタは考える、霧中の中で戦えば混戦は必至。 命令系統も崩れ、士気は大いに乱れる可能性が高い。ただでさえ劣勢なのだ、それは致命打になりかねない。 多くの人が死ぬ、一時撤退もやむをえない。そして・・・戦うか降伏するかの選択も―――。 その時、霧がいきなり濃くなった。その所為で陽の光が遮られ、辺りが薄暗くなる。 否、そうではない。濃霧も原因であるが、太陽を遮ったのは霧の所為ではない。 真上に巨大な影が出現したのである。よく見るとそれは船、それも旗艦級の大きさである。 「アルビオン軍の・・・レキシントン号!?」 その姿を見知っていた一人の兵が叫んだ。 「殿下をお守りしろ!」 マザリーニが叫ぶ。本陣の真上に敵艦が突如現れたとあっては、とてつもない異常事態である。 アンリエッタはすぐさまユニコーンから下ろされ近衛が取り囲んだ。 レキシントン号はなんらアクションを起こすことはなく、ただ進んでいた。 しかしこれを捨て置き、放置すれば、トリステイン軍は挟撃の形になってしまうだろう。それだけは防がなければならない。 幸い真下なら砲撃はこない、これはチャンスでもあった。アンリエッタは攻撃の指示を出そうとする。 「待って!姫さま!!」 アンリエッタが指示を出す直前、それを制したのはルイズであった。 「ルイズ!?」 アンリエッタは理由を問い質そうとする、しかしルイズはその前に話し出した。 「わかる・・・なんとなくわかるんです。あれは・・・敵じゃない・・・・・・あれは・・あれは・・・・」 「一体何を言っている!?」 アニエスが叫んだ、敵艦なのに敵じゃないとは一体どういうことか。 「アーカードッ!!」 ルイズは己の使い魔の名前を叫ぶと、同時に馬を走らせた。アンリエッタは咄嗟に言う。 「アニエス!ルイズをお願い!!」 アニエスはハッとするもすぐに行動に移った。近衛騎士の本分ではない、だが命令に体が反応する。 馬に乗ってすぐに走らせる、船は尚もその真上で異様な存在感を放っていた。 ◇ かつて、ある吸血鬼が英国にやって来た。自らが渇望する、一人の女を手に入れるために。 その吸血鬼が乗り込んだ帆船は、霧の中を波から波へととび移り、ありえない速度で疾走した。 ――――――乗組員を皆殺しにしながら。 そして遂に死人と棺を満載した幽霊船はタルブの草原へと着港した。 船の名は『デメテル』号。ロシア語でデミトリ号である。 「なつかしい、においがする」 船の突端に立ったアーカードは呟く。 「突き刺される男のにおい、斬り倒される女のにおい、焼き殺される赤児のにおい、薙ぎ倒される老人のにおい」 アーカードは薄く笑みを浮かべた。 「死のにおい、戦のにおい」 ◇ アルビオン軍の指揮官らは怪訝に思った。いきなり示威行為をしていたはずの『レキシントン』号が出現したのだから。 旧『レキシントン』号はトリステイン軍には目も向けず、迂回しながらアルビオン艦隊へと迫った。 アルビオン軍総司令サー・ジョンストンはすぐに連絡の為の騎兵をやった。 艦に近付いた竜騎兵は何事かと目を疑った。それはもはや『レキシントン』号ではなかったのだ。 巨大な十字架が突き立てられた黒い船。黒いマストから伸びる黒い枝。さながら大木のような、その鋭利な枝の先に・・・刺さっている"モノ"。 あまりにも凄惨な光景に騎兵は嘔吐を催した。それは見る影も無いが・・・間違いなくアルビオン軍の兵士、何十人もの"人間だったもの"が、無惨に串刺しにされていたのである。 思わず目を覆いたくなるほどの惨状、誰がこのような非人道的所業を行ったのか。 そして生存者のいない船が動く理由、一体『レキシントン』号に何が起こったというのか。 そこで竜騎兵は何かを確認した、凝視すると少女が船の中央で佇んでいた。この死船の中で恐らく―――まだ生きている? 次の瞬間その竜騎兵は浮遊感に襲われた、竜が地に向かって落ちていたのだ。何事かと思うと乗っていた竜に穴が開いていた。 よくよく見ると血が大量に流れ出ている。なんだ・・・自分の胸にも、大きな、穴が、開いているではないか。 そこまで思ったところで竜騎兵は地へと堕ちた。 それを契機に次々と他の竜騎兵も落ち始める。 響き渡る破裂音。アーカードはその眼で遠くの竜騎兵を確実に捕捉し、カスール改造銃はその弾丸で飛行している竜騎兵らを正確に撃ち抜いていった。 中には火竜の油袋に引火し、爆散し跡形もなく残らない場合もあった。 「これで最後か」 そう言って最後のマガジンを装填する。最後に放たれた六発の弾丸は残った竜騎兵全てをピッタリ撃ち落とした。 銃をしまったアーカードは次の標的を見定める。 当然敵の旗艦、司令塔を失った軍は烏合の衆。手っ取り早く崩すには頭を潰す。 本来それは容易なことではない、しかし敵艦を装ってる今ならばそれも難しいことではなかった。 アーカードは搭載されている大砲を一発、敵旗艦に撃ち込んだ。 次に串刺しにしていた者達を己の内に取り込んだ後、マストをへし折る。 そして突然の砲撃に混乱している敵旗艦に向かって無造作に投げ放った。 マストは敵旗艦のど真ん中に深々と突き刺さり、その機能と機動力とを奪う。 アーカードはただ一度だけ大きく跳躍し、敵旗艦へと降り立った。 飛び移る最中に取り出したトミーガンを、視界内に見える兵士達に向かって撃ち放った。 何発も体に弾丸を撃ち込まれたアルビオン兵士達は、体が少し跳ねたかと思うと次々にその場に崩れ落ち絶命する。 アーカードを敵と認識したメイジ達が魔法を放つ。 何度も何度も、放たれた魔法がアーカードを蹂躙する。どう見ても、とっくに死んでるだろうにも拘わらず・・・それは尚も続いた。 人の形すらなくなり、魔法を当てるべき目標がわからなくなったところでようやくそれは止まる。 「はぁ・・・はァ・・・やったか!?」 メイジの一人が言った、上半身がバラバラになった少女を見てもう一人が口を開く。 「殺しすぎでしょう、こりゃ」 「っち、一体なんだったんだ、クソッ!」 さらに一人が死んだ仲間を見て毒づいた。その瞬間、甲板に声が響いた。 「走狗め」 心に直接響いてくるようなその声に、兵士達全員が驚愕する。 「狗では、私は、殺せない」 原型を留めていない上半身がゆっくりと浮き、起き上がる。 兵士たちは呆けた顔で目を見開き、その非現実的な光景を見守るしかなかった。 「化物を打ち倒すのは、いつだって"人間"だ」 その言葉を皮切りに、いつの間にか元の形に戻っていた少女は一人の兵士の首に、その牙を突き立てた。 そのまま大きく振り回し、吸血鬼の咬合力で頭と体が泣き別れになる。 周囲に飛び散る鮮血と、動かなくなった首のない体、そして転がる頭はその場にいた者の思考を麻痺させるには充分であった。 後はただただ一方的な暴虐。 家畜を屠殺するかの如く、踏み潰した虫けらの数を数えるように、アーカードは笑いながら暴力を振るう。 眼前の恐怖に、兵士達は蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。アーカードはトミーガンを拾い上げ、緩慢に歩いて追跡する。 必死に扉を閉めようとするところに、トミーガンを挟み込む。 「 O p e n S e s a m e 」 できた隙間からさらに左手を捻じ込み、扉は開け放たれた。 「兵士諸君、任務御苦労。さようなら」 身震いするほど禍々しくて悍ましい。死と生の上でダンスを刻む者。狂気と正気を橋渡しする存在。 その少女の姿に、地獄を見る。アルビオン軍兵士達は、わけのわからないまま、ただ生きていることを恐怖し、そして後悔した。 ◇ ルイズはひたすら馬で戦場を駆けていた。 生々しい戦の惨状を目の当たりにしながらも、心を強く保つ。 次の瞬間、走っている目の前に何かが落ちてきた。 馬は驚きルイズは振り落とされる、咄嗟の事ながらもルイズはかろうじて受身を取った。馬はそのまま走り去っていく。 それは焼け焦げた鞍のようだった。空中から落ちてきたこと、さらには大きさから鑑みるにおそらくは竜の・・・。 「ふぅ~・・・」 ルイズは大きく息を吐いた。 アーカードから体捌き等を教えてもらう以前の自分だったら、きっと無様に地面に叩き付けられ怪我を負っていたことだろう。 「あっ・・・」 次にルイズは目の前に落ちた物に気付いた。それは姫さまから預かった『始祖の祈祷書』であった。 受身を取れたはいいものの、弾みで落ちてしまったしまったようだ。 ルイズは手早く拾うと同時に、何か違和感を感じた。 (光ってる・・・??) 『始祖の祈祷書』は僅かに発光していた。同時に姫さまから頂いた水のルビーも、ルイズの指で同じように仄かな光を発している。 恐る恐る開くと、白紙だったはずのページにずらっと古代ルーン文字が羅列されていた。 ルイズの鼓動が大きく脈打つ。それを読み進めていく内に、思わず胸の辺りを手でギュッと握った。 読める。内容がわかる。これは――――――。 空に目を向ける、敵旗艦とレキシントン号は遠めでも肉薄するくらいの距離まで近付いていた。 (・・・・・・マスト?) 敵旗艦に突き刺さったナニカ、そしてレキシントン号からなくなっているモノから推察する。 (アーカードは相変わらず随分な無茶を・・・) あんな破天荒なことを出来るのは、自分の使い魔しかいないだろう。 彼女は彼女の策で示威行動をしていた敵艦を潰し、しかもそれを奪って援軍として駆けつけてくれたのだ。 「すゥ~~~・・・はァ~~~・・・」 ルイズは何度か深呼吸をする。心が妙に落ち着き、少しずつ高揚してくるのがわかる。 『始祖の祈祷書』に書かれていたこと、それが意味すること。 そうだ、一体何故自分が『ガンダールヴ』を召喚したのか。 幼き頃から誰一人として説明できなかった、発動しないのではなく『爆発』という失敗。 そして『始祖の祈祷書』に書かれたその内容。 たった今自分から湧き上がってくる不思議な感覚。全てを照らし合わせて見えてくる結果。 ゼロ 『虚無』のルイズ。 ルイズはギュッと拳を握り締めた。そうだったんだ、落ちこぼれだった理由も・・・その所為だったんだ。 杖を取り出し、始祖の祈祷書を読み進める。知らず知らず唇の端をあげルイズは笑っていた。 ルイズは周囲の様子を一度だけ確認する。 敵軍は混乱していた、それもその筈。敵艦を乗っ取り暴れ回っている自分の使い魔がいるのだから。 だから戦場のど真ん中に立つ一人の少女なんて気にも留まらない。 そもそも制空圏を奪っていた機動力に優れる竜騎兵達は、あらかたアーカードが撃墜したのだから当然だった。 敵艦隊は思うように動けず、地上軍は遠目で見る限りはまだまだ離れている。 ルイズは一呼吸を置き、詠唱を始める。自分の中でナニカが渦巻き、それが高められていくのが分かる。 期待が確信に、推測に過ぎなかったものが事実へと変わった。 嬉しさの余り叫びたくなるものの、詠唱を始めた以上中断するわけにはいかない。 しかしそんな雑念もすぐに振り払われていった。 ◇ アニエスは必死に馬を走らせ、ようやくルイズの姿を確認した。 桃色の髪を伸ばした小柄な少女。乗っていた馬はどこに消えたのか、たった一人戦場の中で立っていた。 「ヴァリエール殿!!」 アニエスは叫んだ、周囲に敵影がないとはいえ戦場に突っ立ってるなど危険すぎる。 いつ砲弾が飛んでくるかもわからないのだ、しかし声を掛けるものの応答がない。 馬でルイズの前方へと回り込む、そこでようやくルイズが詠唱しているということに気付いた。 馬から降りて近付く、しかしルイズは自分に気付く様子はなかった。 「ラ・ヴァリエール殿?」 再度声を掛けるもののそれを意に介さず、それぞれ書と杖を片手に詠唱を続けていた。恐ろしいまでの集中力である。 アニエスは空を見上げる。 レキシントン号はトリステイン軍に見向きもせず、アルビオン艦隊旗艦まで接近していた。 信じ難いがルイズの言った通り、あそこにはアーカードが乗っているというのか。 俄かには信じ難い。しかしあの少なくとも敵ではない艦が現れてから、流れが大きく変わったのは事実であった。 そしてアルビオン軍は乱れていた。指揮系統のトップに位置した旗艦は炎上し、艦隊はまともに動けなくなっている。 たった一隻の船が戦局を変えてしまった。劣勢であったが今攻めれば恐らく同等の戦いは出来るだろう。 もしそれがたった一人の使い魔がもたらした結果であるなら、その者は英雄というより他ない。 普通の魔法では考えられない長い長い詠唱を終えた。 ルイズはその威力を理解する、アーカードを巻き込んでしまうのが問題だったがそれも杞憂に終わった。 対象を選べる。全てを消し飛ばすか、一部を破壊するか。 尤も全てを吹き飛ばしたところで、己の使い魔だけはきっと何食わぬ顔をしてるんだろうな、などと思っていたが。 艦隊とは距離がある、しかし問題はない。 標的は敵旗艦、そして周囲の艦隊、その全て。 いつの間にか目の前にアニエスがいるが、気にしない。 ルイズは万感の想いを胸に、杖を振り下ろした。 風を切る音に、アニエスは振り向く。見ればルイズがその鳶色の瞳を見開き、掲げていた杖を振り下ろしていた。 その視線は自分よりも遥か後方、アルビオン艦隊を真っ直ぐ見つめていた。 アニエスはまたアルビオン艦隊の方向へと視線をやる、形容するならそれは太陽。 燦々と照りつける、遥か空の上の太陽とは別に、中空に光球が出現した。 光は見る見るうちに艦隊を包み込み、音もなく爆発する。 全てが終わった後に見た光景は、艦隊の全てが炎上する姿。 そしてそれら全部が、ゆっくりと一斉に地上へと墜落していく。普通見ることなどありえない、とてつもない光景であった。 (一体何が・・・・・・!?) そこではっとしてアニエスはルイズへと再度振り向いた。 ルイズは崩れ落ち、トスっと地べたに座り込んだ。そして大きく息を吐く。 これはまさか――――――ヴァリエール殿が・・・? タイミングまさにそれだった。ルイズが杖を振り下ろし、そして光が膨れ上がった。 これまでの状況を鑑みるに・・・、一連の不可解な行動、その全てにある種の一貫性があるように感じた。 「ぁぁ・・・そういえばアニエス、こんなところで何やってるの・・?」 思惟に耽るアニエスを、ルイズは呆けた目で見つめる。 「あ・・あぁ、姫さまに頼まれて・・・ラ・ヴァリエール殿を守るようにと」 「そう」とルイズはそっけなく言い、次に破顔一笑する。 「はぁ~~~・・・・・・、アーカード大丈夫かなあ?」 そう言って大の字に寝転がる。アニエスはそんな少女を暫し呆然と見つめていたが、跳ねるようにルイズの上半身が起き上がった。 「そうよ!早く姫さまのトコに行かないと!!」 次にルイズは弾かれたように立ち上がる。 「アニエス、馬どこかに行っちゃったから後ろに乗せて。あなたも近衛なんだから、すぐ姫さまのところに行かないと――――」 しかしアニエスは首を振った。 「アルビオン軍は空の主力を失い、謎の攻撃で士気は大いに下がっている。即ち敵はまともな支援も受けられない上に混乱している状況。 即ち今は絶好の機と言えます、これをみすみす逃すとは到底思えません。つまり・・・――――――」 そこまで言ったところで、遠くから怒号のようなものが聞こえる。 方角はルイズやアニエスがきた方向、トリステイン軍がいる陣であった。 「なるほど」 ルイズは納得した。自分達から行かなくても向こうからきてくれる、チャンスは今この時を以って他にないのだ。 「しかしここは通り道になるでしょう、早く離れる必要はあります」 アニエスはそう言うと馬に乗る、ルイズも頷いて後ろに乗った。諸々ルイズに聞きたいことがあったが、アニエスは黙っていた。 表情には出してないがかなり疲労してるようだし、自分の背に体を預けてくるのがわかったからである。 トリステイン軍は勝てる。流れは完全にこちら、勢いもある。 それもこれも恐らくは、自分の後ろにいる小さな英雄のおかげだろう。 そして小さな英雄が放った魔法を、最大限効率的に作用させる為に、艦隊を足止めしたその使い魔。 確たる根拠はない。が、アニエスは何故か確信に近い思いを抱いていた。 ◇ 草原は墜落した艦隊の墓場のようになっていた。残骸の一部から手が伸び、一人の少女が這い上がって姿を現した。 「ケホッ・・・ケホッ」 艦内にいた筈なのに・・・いきなり視界に光が満ちた、と思えば船が落ちた。 周囲を見る、上空を見る。艦隊全てが落ちていたようだった。 追い詰め殺し損ねた連中が、自分の姿を見つけ逃げているようだったがそれすらも気にならない。 「わけが・・・わからん」 アーカードは空を仰いだまま一人ごちた。 前ページ次ページゼロのロリカード
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336 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 10 49.67 ID gckj6eAy0 ~次の日~ / __ ̄`ヽ { ヽ / ゝー { { ゝ= __ ゝ ′ ` 、 / \ . / / / | ∧ \ ヽ / / | | | | |. . . ;l_l__. | |l | | . 从7ナ ヘヽ;. }レ从/ノリ | . | . .|ィ孑テ ` |ノイソ} .| 「うう~ん……!? ……ああ、びっくりした | . . | ヽ, ゞー 、`´ | | そうだ……私昨日あいつを召喚しちゃって……それで疲れて寝ちゃったんだっけ ノ. |. . ヽ . ゝ _ /| ヽ そう言えばあいつ自分の名前も言ってないじゃない /. . .ノ . . . } . . .}` 、_ イ . . | . 、\ ……ここらで一回ご主人様としてしっかり教育しなきゃね…… //. . ./. . . ./l . . . .〉_,_,_」-┤ . ヽ. ヽ, ヽ こら! あんた! 起きなさい!」 ./ {. . ./ rーく/ . . . / /∧ ∧ . . \〉 } ヽ l . レ / . . . . ∧ ⌒∨ \ . .ヽ ノ \! l l . . ./、 ヽ、/ -ー } . . . .Y }/ | .. . { \_ _/ | . . . / /l \ ヽ ノ || \ / . . . .∧ヽ ./ | 〉 . .\ || ヽ/ . . . / | \ 339 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 11 55.51 ID gckj6eAy0 ,. -‐ 、. /  ̄`~` ‐ 、 / ` ` ‐、 / `‐、 / \ , \ / ! \ / l ! | i . / , │ l l ! | │ / /./ | │ l 、 | | | , | .l ! . / / /l ! l | | | \ !|l | / | | ! / / ./ ! | l l | | ヽ. ヽ\ \ ヽ. ヽ. |│/ヽ| ! l ! 「すでに起きている。貴様が寝すぎなだけだ」 ` ‐ 、| l ヽ. ヽ.ヽ. ! l\\`‐、ヽ、\ヽ.| レ /ヽヽl ! ! . `‐、| 、ト、__\ 、 ヽ. l トーz、-‐ラ フヽ!|!/_,ゝヽ }. |│ \ヽl\`ー ヽ、\ヽ ∨ー`‐← ||!-、-、 /! |│ ヽト. ´ ̄ジヽN` -ゝ |! リ /|.| | | ! \ _iー | |.| | | |\. \ r‐== ヲ |  ̄`~` ‐ - 、 | ` ー-ヽ、 V r -‐ / .| | | `‐、 `ー- ./| , -.、 | | `‐、 / .| { {lll}} f{! _ _,,. 、-‐ | `エ´-─ー| ` ー ゞ ´ ヽ` ー- |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| / 348 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 15 39.50 ID gckj6eAy0 , -‐ ´ ` ー、 / `ー-、 ,‐´ 、 `ヽ、 f‐ | ヽ ヽ ヽ / ー、 ヽ_ / ヽ ヽ ヽ\ ヽ / } _ l ヽ ヽ/! ヽ i ヽ i l / / ヽ l、 ヽ l ハ/f-f、 }l l、 |リ l l l_l_lr- {_ゝヽ ヽ |//fc リ /! /リ l |. . } l ハ、=ゞ==リ / ムソ /イ 〈 「きゃっ!? おおお、起きてたんならご主人様を起こしなさいよね! ノ l. . l イ /´七C、ム/ .. lゝ、ヽ、 ……んん! 昨日はうやむやになっちゃったけど、あんたは使い魔なの `ー-´ _-‐!. . ヾ l 弋ソ .. .. }l  ̄ 使い魔はご主人様のために働くのが当然で ー----- f´ ヽ. . ヽ、 ,__ -= /ヽ、 朝起こすのも、洗濯も、掃除も、着替えも全てあんたがやるのよ . . . _-―‐´、 ヽ. . . ヽ、 /  ̄ノ/! ヽ、 いい? わかった?」 . . . ヽ ヽ、 \ . . . ヽ、_ー‐ニ‐´ !. . ヽ、 . . . . .ヽ、ヽ ヽ、_ ヽ、! ヽフニイ / /ヽ . . ヽ . . ./ヽ、ヽ `ー-ヽ. . ヽl ll l / ヽ、. . ヽ . . . i ヽ \ }. . } l 7 | / }. . . } . . l \ `ヽ、 /. . . . , ヽTl / / /. . / . . .l \ \/. . . . /`ヽ、/ /. . . / . ./ ヽ/. . . . / / l| /. . . ,-‐´ 355 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 18 42.66 ID gckj6eAy0 ,. -‐ 、. /  ̄`~` ‐ 、 / ` ` ‐、 / `‐、 / \ , \ / ! \ / l ! | i . / , │ l l ! | │ / /./ | │ l 、 | | | , | .l ! . / / /l ! l | | | \ !|l | / | | ! / / ./ ! | l l | | ヽ. ヽ\ \ ヽ. ヽ. |│/ヽ| ! l ! 「ふぅん、さすが凡骨言うことが違うな ` ‐ 、| l ヽ. ヽ.ヽ. ! l\\`‐、ヽ、\ヽ.| レ /ヽヽl ! ! 己の無能を棚に上げ人に頼るとは . `‐、| 、ト、__\ 、 ヽ. l トーz、-‐ラ フヽ!|!/_,ゝヽ }. |│ 着替えすらまともにできんとは、貴様は凡骨よりも猿のほうがお似合いだな \ヽl\`ー ヽ、\ヽ ∨ー`‐← ||!-、-、 /! |│ 人として恥をしれ!」 ヽト. ´ ̄ジヽN` -ゝ |! リ /|.| | | ! \ _iー | |.| | | |\. \ r‐== ヲ |  ̄`~` ‐ - 、 | ` ー-ヽ、 V r -‐ / .| | | `‐、 `ー- ./| , -.、 | | `‐、 / .| { {lll}} f{! _ _,,. 、-‐ | `エ´-─ー| ` ー ゞ ´ ヽ` ー- |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| / 382 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 24 34.05 ID gckj6eAy0 , -‐ ´ ` ー、 / `ー-、 ,‐´ 、 `ヽ、 f‐ | ヽ ヽ ヽ / ー、 ヽ_ / ヽ ヽ ヽ\ ヽ / } _ l ヽ ヽ/! ヽ i ヽ i l / / ヽ l、 ヽ l ハ/f-f、 }l l、 |リ l l l_l_lr- {_ゝヽ ヽ |//fc リ /! /リ l |. . } l ハ、=ゞ==リ / ムソ /イ 〈 「さ、さささ猿ですってぇ~!? ノ l. . l イ /´七C、ム/ .. lゝ、ヽ、 ご主人様に向かって何てこというのよ! 誰が養ってあげると思ってるの!? `ー-´ _-‐!. . ヾ l 弋ソ .. .. }l  ̄ あんたこれからご飯抜きよ!? 一生あげないんだからね!?」 ー----- f´ ヽ. . ヽ、 ,__ -= /ヽ、 . . . _-―‐´、 ヽ. . . ヽ、 /  ̄ノ/! ヽ、 . . . ヽ ヽ、 \ . . . ヽ、_ー‐ニ‐´ !. . ヽ、 . . . . .ヽ、ヽ ヽ、_ ヽ、! ヽフニイ / /ヽ . . ヽ . . ./ヽ、ヽ `ー-ヽ. . ヽl ll l / ヽ、. . ヽ . . . i ヽ \ }. . } l 7 | / }. . . } . . l \ `ヽ、 /. . . . , ヽTl / / /. . / . . .l \ \/. . . . /`ヽ、/ /. . . / . ./ ヽ/. . . . / / l| /. . . ,-‐´ 398 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 28 54.96 ID gckj6eAy0 , -─- 、 , -‐- 、 ,, - `V `‐、 / \ ./ \ / ヽ ./ / l ヽ / / / / ./ / l | .l .lヽ | l. l / / / ./ .l | | l / / l l.〉 l、 | | l / / ./ ./ |. l | ./ ./ ./ | |./ l、| | l // ///| l / / //// / / . l、l | /l///_/ l / //_|/_∠| / | / . /⌒ヽ | \ `ー ゝl // `ー /|/⌒v 「勝手にするがいい。先ほどこの寮の中を探索したが厨房があるようだな | l⌒l l|  ̄ ̄ //|〉 ̄ ̄ ̄ .|/^_l.l あれだけの設備があれば飯など自分で作れるわ ヽゝ(ー| /| ´ \| ll ),l ノ ふぅん。それよりもいいのか? 部屋の外がずいぶんと騒がしくなってきている lヽ_ / | ┌───7 /._/ お前が遅刻しようと俺には関係はないがな」 .l/ | l ̄ ̄ ̄/ / / ,ノ! / |.. V´ ̄∨ ./ /,.-‐ .| ./ (;;) |\ `ー‐ ´ / / | | _|_\ /| ./ | (| ,.-‐ | \__/ .|/ _,.-─; |/ .(;;) |─────┤ _,.-‐ /  ̄ | |^l / 424 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 33 27.50 ID gckj6eAy0 / . / . 〃. / ヽ . .l. . . . . . / / ./  ̄.`X /. . . { { ヽ , . ヽ . .!. . . . . . l | .l . . . /l. . l\ ∧ . , . .j . 厶 .-ヘ ̄|`. . . . l | . ! | . . . ! ヽ{_ V\ヽ ハ . . /jイ/ \ . l. . |. . . . . . ヽヘ . .从 . . .lィ彡≠=ミ、 ´ } `ー/ ,ィ===ミヽヾ j . . . 「は、早くそれを言いなさいよね! |`ヽ!ヽ . . .{´ _ノ / ヾくリ . . . . ああもう! 使い魔がいるのになんで自分で着替えなくちゃいけないのよ!」 | . ハ. . .\ヽ __ _ , . . . . . ノ_厶| . . l / `ー─ヘ. / . . . . . 厂 | . . ,. , /´ ̄ ̄ヽ l / . . . . . . . _l l . .ヘ f { }l イ . . . . . . . _ -‐彡j ,′ . . . .\ ヽヽ ___ ノ/ /〃 . . . . . . . / .{ / . . . ヽ ヘ、 ` ー一 ´ イ/ ,′ . . . . . . . / . . . ./ \ / . . . . . ∨\_≧ー-‐≦_/ /i . . . . . . . 〃 . . . // \ / . . . . . . .l ∧ ∧ / { . . . . . . { . . / . / / . . . . . . . . .| ,/ ∨ ヽ / ヽ . . . . . . 430 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 34 57.92 ID gckj6eAy0 ,. -‐ 、. /  ̄`~` ‐ 、 / ` ` ‐、 / `‐、 / \ , \ / ! \ / l ! | i . / , │ l l ! | │ / /./ | │ l 、 | | | , | .l ! . / / /l ! l | | | \ !|l | / | | ! / / ./ ! | l l | | ヽ. ヽ\ \ ヽ. ヽ. |│/ヽ| ! l ! 「……貴様、俺の存在を忘れるとはいい度胸だな」 ` ‐ 、| l ヽ. ヽ.ヽ. ! l\\`‐、ヽ、\ヽ.| レ /ヽヽl ! ! . `‐、| 、ト、__\ 、 ヽ. l トーz、-‐ラ フヽ!|!/_,ゝヽ }. |│ \ヽl\`ー ヽ、\ヽ ∨ー`‐← ||!-、-、 /! |│ ヽト. ´ ̄ジヽN` -ゝ |! リ /|.| | | ! \ _iー | |.| | | |\. \ r‐== ヲ |  ̄`~` ‐ - 、 | ` ー-ヽ、 V r -‐ / .| | | `‐、 `ー- ./| , -.、 | | `‐、 / .| { {lll}} f{! _ _,,. 、-‐ | `エ´-─ー| ` ー ゞ ´ ヽ` ー- |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| / 444 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 37 10.48 ID gckj6eAy0 , -‐ ´ ` ー、 / `ー-、 ,‐´ 、 `ヽ、 f‐ | ヽ ヽ ヽ / ー、 ヽ_ / ヽ ヽ ヽ\ ヽ / } _ l ヽ ヽ/! ヽ i ヽ i l / / ヽ l、 ヽ l ハ/f-f、 }l l、 |リ l l l_l_lr- {_ゝヽ ヽ |//fc リ /! /リ 「はぁ? 何言ってるのよ l |. . } l ハ、=ゞ==リ / ムソ /イ 〈 使い魔に体見られたって恥ずかしいわけないでしょ ノ l. . l イ /´七C、ム/ .. lゝ、ヽ、 もう! 時間ないんだから邪魔しないでよ!」 `ー-´ _-‐!. . ヾ l 弋ソ .. .. }l  ̄ ー----- f´ ヽ. . ヽ、 ,__ -= /ヽ、 . . . _-―‐´、 ヽ. . . ヽ、 /  ̄ノ/! ヽ、 . . . ヽ ヽ、 \ . . . ヽ、_ー‐ニ‐´ !. . ヽ、 . . . . .ヽ、ヽ ヽ、_ ヽ、! ヽフニイ / /ヽ . . ヽ . . ./ヽ、ヽ `ー-ヽ. . ヽl ll l / ヽ、. . ヽ . . . i ヽ \ }. . } l 7 | / }. . . } . . l \ `ヽ、 /. . . . , ヽTl / / /. . / . . .l \ \/. . . . /`ヽ、/ /. . . / . ./ ヽ/. . . . / / l| /. . . ,-‐´ 448 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 38 00.60 ID gckj6eAy0 ,. -‐ 、. /  ̄`~` ‐ 、 / ` ` ‐、 / `‐、 / \ , \ / ! \ / l ! | i . / , │ l l ! | │ / /./ | │ l 、 | | | , | .l ! . / / /l ! l | | | \ !|l | / | | ! / / ./ ! | l l | | ヽ. ヽ\ \ ヽ. ヽ. |│/ヽ| ! l ! 「……ふぅん、先に行くぞ」 ` ‐ 、| l ヽ. ヽ.ヽ. ! l\\`‐、ヽ、\ヽ.| レ /ヽヽl ! ! . `‐、| 、ト、__\ 、 ヽ. l トーz、-‐ラ フヽ!|!/_,ゝヽ }. |│ \ヽl\`ー ヽ、\ヽ ∨ー`‐← ||!-、-、 /! |│ ヽト. ´ ̄ジヽN` -ゝ |! リ /|.| | | ! \ _iー | |.| | | |\. \ r‐== ヲ |  ̄`~` ‐ - 、 | ` ー-ヽ、 V r -‐ / .| | | `‐、 `ー- ./| , -.、 | | `‐、 / .| { {lll}} f{! _ _,,. 、-‐ | `エ´-─ー| ` ー ゞ ´ ヽ` ー- |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| / 461 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 43 13.92 ID gckj6eAy0 ,. -‐ 、. /  ̄`~` ‐ 、 / ` ` ‐、 / `‐、 / \ , \ / ! \ / l ! | i . / , │ l l ! | │ / /./ | │ l 、 | | | , | .l ! . / / /l ! l | | | \ !|l | / | | ! / / ./ ! | l l | | ヽ. ヽ\ \ ヽ. ヽ. |│/ヽ| ! l ! 「ふぅん。本来なら凡骨に名乗る名はないが ` ‐ 、| l ヽ. ヽ.ヽ. ! l\\`‐、ヽ、\ヽ.| レ /ヽヽl ! ! 特別に教えてやろう」 . `‐、| 、ト、__\ 、 ヽ. l トーz、-‐ラ フヽ!|!/_,ゝヽ }. |│ \ヽl\`ー ヽ、\ヽ ∨ー`‐← ||!-、-、 /! |│ ヽト. ´ ̄ジヽN` -ゝ |! リ /|.| | | ! \ _iー | |.| | | |\. \ r‐== ヲ |  ̄`~` ‐ - 、 | ` ー-ヽ、 V r -‐ / .| | | `‐、 `ー- ./| , -.、 | | `‐、 / .| { {lll}} f{! _ _,,. 、-‐ | `エ´-─ー| ` ー ゞ ´ ヽ` ー- |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| / 467 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 44 55.14 ID gckj6eAy0 , -─- 、 , -‐- 、 ,, - `V `‐、 / \ ./ \ / ヽ ./ / l ヽ / / / / ./ / l | .l .lヽ | l. l / / / ./ .l | | l / / l l.〉 l、 | | l / / ./ ./ |. l | ./ ./ ./ | |./ l、| | l // ///| l / / //// / / . l、l | /l///_/ l / //_|/_∠| / | / . /⌒ヽ | \ `ー ゝl // `ー /|/⌒v 「俺の名は海馬瀬人!!!! | l⌒l l|  ̄ ̄ //|〉 ̄ ̄ ̄ .|/^_l.l 決闘者の頂点に立つ男だ!!!! ヽゝ(ー| /| ´ \| ll ),l ノ フハハハハハハハハハ!!!!!!!!」 lヽ_ / | ┌───7 /._/ .l/ | l ̄ ̄ ̄/ / / ,ノ! / |.. V´ ̄∨ ./ /,.-‐ .| ./ (;;) |\ `ー‐ ´ / / | | _|_\ /| ./ | (| ,.-‐ | \__/ .|/ _,.-─; |/ .(;;) |─────┤ _,.-‐ /  ̄ | |^l / 478 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 47 06.23 ID gckj6eAy0 / 、 \ \ /` \ X ヽ ヽ ヽ / / / l ∨,斗、! ! | |/ / | |\ / f ハ ゙| l , {| | 丁≧ミ、/ ゞ′ l | 、ヽ レ ヾ \く ヾ;〉 , 、 | l ヽ \ 「きゃああああ!? ちょっと!? \.>〃 ` / ノ/ ∧ \ , 何大声上げてんのよ!?」 r ^ヾヽ |ハ、__ ヽ /〃´  ̄`ヽ ヽ! / } .リ | | ̄// \ \ ヽ /ヽ ノ l ∨ / 、 ヽ ` ー -- 、 Y´ /`ヽ. |/ 〈 _ \ ! \ ヽ/ \ ノ´ ヽ ヽ ト、 \ , { \ソ ̄ `ヽ \ , |ヽ\ \l \ \ l ヽ l|. \\ } . \ } ハ | ∧. ヽ \ / / ヽ /! } ! / ヽ } ヽ / /`ヽ ノ\ \ //| | | \ | / 480 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 49 16.19 ID gckj6eAy0 ,. ´ ̄ ` 、 /`´ \ / 、 `ヽ、 / / !ヽ i i i | / / ,|/⌒、 | ハノ !`´ i 、\灯`|ノi / 「ミセス・シュヴールズ 人,ノ! i ト、.\. | .i/ >`ー- 、_ ゼロのルイズの使い魔がうるさくて勉強に集中できませーん」 / ∧i, |ヽ ̄ / ∨ ` ‐ 、 `ー´ / .ハ\ k. フ/ , `ー、 ;ヘ _,./ / i |\ トイ ! /ゝ、 ヽ; /! ヘ ./ ./ ー.j |―\!v ⌒ヽ;/´ ` -、i / ./ i / / i ム ,ノ / ヽ r ´ / | .| /. |,.- ´  ̄`ヾ; / ∨ i | / i ,! ヘ、_ _ ,.-, / ノ 、 ,/ i / | .r _`__ ∨イ.〉´ , く_/´ / / !/ ヽ ト、 _,.-y´//_ ,.- く,i `v、 / / ;/ ノ .人ゝ._,.ノ_,/ i ヽ、 iク / / / ー / i ヾ´ / 496 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/12/02(日) 22 53 28.86 ID gckj6eAy0 , -‐ ´ ` ー、 / `ー-、 ,‐´ 、 `ヽ、 f‐ | ヽ ヽ ヽ / ー、 ヽ_ / ヽ ヽ ヽ\ ヽ / } _ l ヽ ヽ/! ヽ i ヽ i l / / ヽ l、 ヽ l ハ/f-f、 }l l、 |リ l l l_l_lr- {_ゝヽ ヽ |//fc リ /! /リ 「キュルケ! あんたは元から勉強する気なんてないでしょ l |. . } l ハ、=ゞ==リ / ムソ /イ 〈 ……え? ミセスシュヴルーズ ……はい。わかりました。 ノ l. . l イ /´七C、ム/ .. lゝ、ヽ、 『錬金』をみんなの前でやってみせます」 `ー-´ _-‐!. . ヾ l 弋ソ .. .. }l  ̄ ー----- f´ ヽ. . ヽ、 ,__ -= /ヽ、 . . . _-―‐´、 ヽ. . . ヽ、 /  ̄ノ/! ヽ、 . . . ヽ ヽ、 \ . . . ヽ、_ー‐ニ‐´ !. . ヽ、 . . . . .ヽ、ヽ ヽ、_ ヽ、! ヽフニイ / /ヽ . . ヽ . . ./ヽ、ヽ `ー-ヽ. . ヽl ll l / ヽ、. . ヽ . . . i ヽ \ }. . } l 7 | / }. . . } . . l \ `ヽ、 /. . . . , ヽTl / / /. . / . . .l \ \/. . . . /`ヽ、/ /. . . / . ./ ヽ/. . . . / / l| /. . . ,-‐´ 前へ トップページ 次へ
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前ページ次ページゼロのロリカード シカゴタイプライターなどとニックネームがつけられるその連射音は独特だった。 ドラムマガジンが装着されたトンプソンM1928を、片手で振り回しトリガーを引く。 本来ならばストックを肩につけるか脇に抱えて撃つものであるが、吸血鬼の膂力ならば片手でもその反動を簡単に抑えきれる。 しかしトミーガンの.45ACP弾ではオーク鬼の分厚い皮と脂肪に覆われた筋肉の体には何発撃とうとも致命傷足りえない。 尤も目的は別のところにある、弾幕を張り怯ませて足止めさえ出来ればそれでよかった。 トミーガンをしまいつつアーカードは怯んだオーク鬼を無視して、自分に襲い掛からんとする正面のオーク鬼の水月に向かって右足で蹴りを放つ。 蹴りこんだ水月を踏み台にしてオーク鬼の肩に駆け上り、右膝をその顔面にぶち込む。 さらに後ろに倒れんとするオーク鬼に駄目押しの左肘を叩き込み、オーク鬼の頭蓋は完全に粉砕された。 次に銃弾に怯んだオーク鬼の方に向かって跳躍をする。右足を天高く振り上げ、全身の強靭なバネでもって振り下ろす。 怯んでいたオーク鬼の脳天に放たれた踵落としは一撃で頭の原型をなくすに至った。 アーカードは勢いを保ったまま、頭のなくなったオーク鬼の体を蹴って再度跳躍し、回転しながら森の方に着地する。 アーカードは着地箇所の手近にある木の根元を蹴り抜く、次に倒れてきた木の先端と後端に素早く手刀を入れた。 数秒で出来上がった丸太の切断面は、まるで肉厚の大斧で一刀両断したかのように綺麗であった。 アーカードが丸太を握る。すると左手の『ガンダールヴ』のルーンが光り輝き、アーカードの驚異的な身体能力をさらにスペックアップさせた。 アーカードは丸太をくるくると回しながら、オーク鬼に向かって再び突撃する。 一足飛びに跳躍し、丸太の先端を顔面に叩き付け、そのまま押し倒し、地面で完全に圧し潰した。 しかし次の瞬間アーカードの背後に位置したオーク鬼が、その無防備な背中に向かって渾身の力で棍棒を振り下ろす。 アーカードは器用に丸太を回転させると、オーク鬼に背を向けたままこれをガードした。 渾身の棍棒を自分達より遥かに小さい少女に難なく受け止められオーク鬼は困惑する。アーカードは背を向けたまま立ち上がり、丸太を大きく振りかぶる。 アーカードのパワーに遠心力が加わった丸太スウィングは、質量・速度共にオーク鬼をぶっ飛ばすには充分過ぎた。 強烈なインパクトによりオーク鬼の内臓は破裂し、その巨体は宙を舞った。森の木々を数十本ほどなぎ倒しようやく止まる。 内外問わず体中がグチャグチャになったオーク鬼は、最初はピクピクと痙攣していたがすぐに動かなくなった。 アーカードは残ったオーク鬼達をゆっくりと睨め付ける。 この時点で、タバサとキュルケによる二度目の魔法攻撃が放たれる。二体のオーク鬼をそれぞれ氷柱の矢が貫き、炎球が頭を燃やし尽くした。 キュルケの使い魔フレイムも一体のオーク鬼を倒し、出鼻にタバサとキュルケが倒した分も合計してオーク鬼の斃された数は既に九体。 残ったオーク鬼は五体、自分達を弄ぶかのように殺す目前の少女にオーク鬼達は混乱する。 アーカードは右手で丸太をドンッと地面に叩き付けて軽い威嚇をおこなった。 蛇に睨まれた蛙と言ったところで、一匹は恐怖に駆られ逃げ出し、一匹は半狂乱に棍棒を振り上げ襲い掛かってきた。 迫り来るオーク鬼に対してアーカードは丸太を槍のように突き出す、それはカウンターの形となった。 顎骨が折れ、歯が砕け、鼻骨が潰れ、目玉は飛び出し、頭骨が残った肉片ごと弾け飛び、オーク鬼は絶命した。 残った三匹は動けないままで、一体はフレイムに倒され、二体はタバサとキュルケの魔法の的となった。 体格に似合わぬ速度で逃走するオーク鬼は、既に魔法で追撃するには不可能なほどの距離を走っていた。 アーカードは落ち着き払った仕草で左腕を伸ばして手の平を空に向ける、そこに丸太をセットして右手を後端にそえる。 そのアーカードの姿はまるで砲台のようであり、攻城兵器さながらの様相を呈していた。 吸血鬼の眼は逃げるオーク鬼の姿を正確に捕捉し、距離を算出し、射角を調整する。 凶悪な力で撃ち出された丸太は、とてつもないスピードでオーク鬼の後頭部へと寸分違わず吸い込まれる。 こうして十数匹のオーク鬼達は三人と一匹により殲滅された。 「・・・なんで使ってくれんのよ」 さめざめとアーカードの肩に背負われたデルフリンガーが口を開く。 「なんでって、『ガンダールヴ』を守る盾だと自分で言っていたではないか。盾を武器にするのはおかしいだろう」 「でも一応剣だし・・・大体なんで丸太なのよ。しかも『ガンダールヴ』まで発動しやがるし」 「丸太は非常に優れた武器だ、打たば槌、突かば槍、守らば盾、投げれば砲弾、リーチが長く、調達も容易、重量も申し分ない。 万能兵器と言っても過言ではないな。・・・まぁ尤も、さっきの丸太程度の大きさでは私にとって小枝のようなモノだがの」 はっはっはと笑いながら、アーカードとフレイムはタバサやキュルケがいる方へと歩いていく。 到着すると軽い口論が発生していた。 「アンタら馬鹿じゃないの」 キュルケに文句を言われていたのは、ギーシュとルイズ。 本来ならばオーク鬼達をおびき寄せ、ヴェルダンデが掘った落とし穴を利用してまとめて駆逐する手筈だったのである。 「いや、しかしだね・・・」 ギーシュは必死に弁解し、ルイズはむすっとした表情をしている。 「これだからトリステインは・・・、戦ってモンをホント知らないみたいね」 ギーシュはわらわらと現れたオーク鬼達に焦り、先走ってワルキューレ達を突撃させたのである。 それにルイズもつられてしまって魔法を唱えるも例によって爆発、どちらもオーク鬼一体すら倒すに至らず逆に怒らせる結果となった。 逆上したオーク鬼はすぐさま匂いで索敵し、ルイズらのいる方向へ走り出す。 タバサとキュルケが咄嗟にフォローに入り、二体のオーク鬼を斃すも勢いは止まらない。 そしてアーカードは駆け出して、トミーガンを取り出し――――というわけであった。 「まったく、実戦力が3人と1匹でよくもまぁあれだけの数のオーク鬼を倒せたもんよ。前衛が優秀だったからかしらね」 そう言ってキュルケはアーカードを見やる、フレイムがキュルケの元へと駆け寄りキュルケは頭を撫でてあげた。 「よしよし、よく頑張ったわねフレイム。まったく四人もいたメイジの内二人が、戦力にならないどころか足を引っ張るなんてね~」 フレイムを褒めながらも、キュルケはルイズとギーシュに皮肉をぶつける。 「主人の失敗をリカバリーするのも、従僕の務めさ」 アーカードとしては一応庇っているつもりだったが、それもこの状況下では皮肉にしか聞こえない。 「ち・・・ちょっと調子が悪かっただけよ」 「戦は先手必勝さ!僕はそれを実践したまでさ!!」 「あ~はいはい、もういいからとっととお宝を探しにいきましょ」 右手を振って二人の言葉を遮り、あしらいながらキュルケは立ち上がる。胸の谷間から地図を取り出すとそれを広げた。 「え~っと・・・寺院の中の祭壇の~・・・」 「もう周囲に気配はないぞ」 アーカードはタバサに近付き声を掛ける。 「・・・そう」 目前の敵を倒したからって安心はできない。どこかに潜んでる可能性も、残党がいる可能性もあった。 若くしてシュヴァリエの称号を持つタバサはそれ故に気を張っていたのだが、それも余計な心配だったらしい。 目の前の吸血鬼がないと言っているならそれは100%ないだろう。彼女は自分とは比べ物にならない戦闘経験を持ち、あらゆる能力が桁違いだ。 視力も索敵範囲も人間のそれとは全然違う、タバサは吸血鬼退治の任務を手伝ってくれたアーカードを信頼していた。 キュルケとフレイムを先頭に歩き出し、ルイズとギーシュもそれに続く。 「行こうか」 アーカードの言葉にタバサは頷き、二人は遅れないように早足でキュルケ達の向かう方へと歩き出した。 ◇ 「結局ここも駄目じゃないか!これで7件目、インチキ地図ばっかりだ!」 「あーあーまったく、大した働きもしてないくせにゴチャゴチャうるさいわねえ。そんな簡単に見つかりゃ苦労しないわよ!」 「・・・」 「・・・」 「・・・」 はぁ~っとキュルケ、ルイズ、ギーシュが溜息を吐く。 「もう終わりにしましょ。アンタに挑発されてついてきちゃったけど、いい加減学院に帰らないと・・・」 と、これはルイズ。その言葉にキュルケはむぅ~っと唇をすぼめる。 「そうだよ、もう帰ろう・・・」 と、これはギーシュ。最早口論する気力も失せてきたような声色である。 戦力トップ2で最も働いているタバサとアーカードは黙していた。 「よしっ!じゃあ次がラスト!!この『竜の羽衣』!」 地図を広げて指をさしながらキュルケは叫ぶ、ラストと聞いてギーシュとルイズも渋々承諾する。 「タバサ、シルフィードを呼んで。目的地は・・・えーと・・タルブの村!」 タバサは静かに頷き、口笛を吹いた。タルブと聞いてアーカードの眉が動く。 「タルブ?確かシエスタの実家があるところではないか」 「シエスタ?・・・・・・って、確か厨房のメイドだっけ?」 キュルケが聞き返す、そこにギーシュが付け加えた。 「あぁ、僕とアーカードが決闘するきっかけを作った平民のメイドだね」 「そうだ。確か少し前に帰省すると言っていたからな、もしかしたらいるかもしれん」 「なるほど、現地人がいるのは助かるわね」 シルフィードがキュルケ達の前に着陸する。 「本当にラストでしょうね」 ルイズが半眼でキュルケに問う。 「正真正銘最後よ」 そう言うやいなやキュルケはシルフィードへと飛び乗る、見るとタバサは既に乗っていた。 「『竜の羽衣』ね・・・今度こそ本物のお宝だと願うよ・・・」 「それじゃ張り切って行きましょう!」 そんなキュルケの言葉に呼応する者は誰もいなかった。 前ページ次ページゼロのロリカード
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ポルナレフがルイズを助ける少し前のこと。 「いいか、よく聞け。フーケが出て来たのはチャンスだ。今なら奴を倒せるかもしれん。」 ポルナレフはシルフィードの上で二人に話し出した。「確かに出て来たのはいいけど、あたし達の魔法じゃきっと効かないわよ?」 「お前達の魔法じゃあ無い。あくまで可能性の話だが…」 タバサが持っていた破壊の杖を指差した。 「その破壊の杖ならあのゴーレムを一発で破壊できるかもしれない。そして俺はその使い方を知っている。」 二人は驚いて、顔を見合わせた。破壊の杖を初めて見たばかりのそれもメイジではないはずのポルナレフが「使える」と言い出したのだ。 「だが、使うにはあそこにルイズがいると危険だし、距離と時間が必要だ。」 だからフーケの動きをしばらく止めてくれ、とポルナレフは頼んだ。 「ダーリンの頼みなら断る理由は無くてよ!それにルイズばかりかっこよくさせとくのも釈だし。」 「…(コクリ)」 キュルケとタバサは快く承知した。 ポルナレフはそれじゃあ頼んだ、とだけ言うと亀と破壊の杖を持って飛び降りた。 「はん!何わざわざ『土』は切れないなんて教えてんだい!これであんたの勝ち目は無くなったよ!」 フーケはゴーレムの腕を鉄に変えずにポルナレフに向かって撃った。 ポルナレフはルイズを抱えて急いで避けると、そのまま背中を向けて逃げ出した。 「逃がさないよ!」 フーケはゴーレムで後ろから追おうとしたが、 「ファイア・ボール!」 キュルケ達に邪魔された。「うざったい虫だね!」 空から来る二人の魔法に足止めを喰らうフーケ。ちらりとポルナレフの方を見ると、いつの間にか大分距離が開いていた。 ヤバイと思ったが、はたと気付いた。何故ポルナレフは破壊の杖を持って来たのだ?ルイズを助けるだけならば邪魔以外のなんでも… そしてフーケはニィっと口を歪めた。 (こいつは『当たり』だったようだね…。まあ、ゴーレムは犠牲になるかもしれないけど…) フーケはそう考えると今度は『わざと』じりじり後退していくような振りをした。 ポルナレフはフーケのゴーレムからある程度距離を取るとルイズを亀の中に入れ、破壊の杖を構えた。 「こんなものには頼りたくないんだがな…生憎チャリオッツじゃああいつには分が悪すぎる。」 ポルナレフはそうぶつぶつ言いながら慣れた手つきで破壊の杖の安全ピンを抜きとり(めんどくさいので省略)安全装置を外した。弾数は一発。失敗は許されない。 「タバサ!準備は出来た!すぐにゴーレムから離れろッ!」 ポルナレフがそう叫ぶとタバサは急いでシルフィードを上昇させた。 それを確認すると、ゴーレムに狙いを定めポルナレフはトリガーを引いた。 しゅっぽっと栓抜きのような音がして羽がついた大きな弾が白煙を引きながら飛び出した。 その弾がゴーレムの身体にのめり込んだ瞬間、その衝撃で信管が作動、弾頭は爆発し、ゴーレムを吹っ飛ばした。 だがその爆風の中、三人共気付かなかった。フーケが砕け散っていくゴーレムの残骸と共に落ちていく最中、笑っていたことに。 「後はこの土の中からフーケを探し出したらようやく終わりね。」 「…」 ポルナレフ、キュルケ、タバサの三人はゴーレムの残骸もとい土の山の前で立ちすくんでいた。ちなみに破壊の杖はすぐ近くの地面に置いてある。(ルイズはまだ亀の中で気絶している。) 正直言ってこの中から探し出すなんて面倒である。 「それにしてもダーリン。何で破壊の杖の使い方を知ってたの?」 「ノーコメントだ。」 「…ずるい」 三人がそんなやり取りを交わしている所に 「皆さんすいません。遅くなってしまって…てこの土の山は!?まさかフーケが…」 ロングビルが森の中から現れた。 「ああ、フーケが襲って来た。罠だったみたいだが俺がその破壊の杖で奴を倒し…「そこまでだよ。全員動くな。」!?」 ロングビルがポルナレフの言葉を遮った。その手には破壊の杖。 「ミ、ミス・ロングビル?」 キュルケがまさか、という顔をした。 「その通り。あたしが『土くれ』のフーケさ。 すまなかったねミスタ・ポルナレフ。あんたのお陰で全ては上手くいったよ。本当に感謝しているよ。」 フーケが嫌味ったらしく言った。 「成る程、やはりあれは嘘だったか。しかし、感謝しているならその破壊の杖を下ろしてもらいたいものだな…」 ポルナレフは静かに言った。 「駄目駄目。だってあたしの正体ばれてるのにここで逃がしたらあたしが大変な目に会うからね。 あんた達には残念だけど、これで死んでもらうよ。」 フーケがそう言って、破壊の杖の照準をポルナレフに合わせようとした時、ポルナレフはクククと笑い出した。 「?何笑ってんだい?」 「さっさと魔法で俺達を始末すればいいのに、貴様が無駄口叩いているのが面白くてな…しかもそれはな、」 ドサッ ポルナレフがそこまで言った時、いきなりフーケが倒れた。首の付け根に丸い凹みが出来ている。 「単発式…てもう聞いてないか。」 ポルナレフはロングビルが自分がフーケと明かした時、既にチャリオッツの剣針を飛ばしていた。 直接やらなかったのはフーケの位置までチャリオッツが届かなかったからだ。そして剣針は森の木々に反射し、見事フーケの首に命中したのだ。 「まさかミス・ロングビルがフーケだったとはのう…」 四人の報告を受けたオスマンは多少残念そうに言った。オスマンいわく、酒場で給仕をしていた彼女の尻を故意に触ったのだが怒らなかった、という理由だけでスカウトしたらしい。 その場にいたコルベール含む五人全員「死ねばいいのに」と思ったのは言うまでもないが、コルベールとポルナレフの親父二人はまあ、色々あったので少し同情した。 とりあえず体裁だけ整えてからオスマンはルイズとキュルケにシュヴァリエ、タバサには精霊勲章を申請しておくと言った。 その言葉に三人は誇らしげに礼をしたが、ルイズはあることに気付いた。 「オールド・オスマン。ポルナレフには何も無いのですか?」 「残念じゃが、彼は貴族では無いのでな…」 「そんな…」 1番手柄を立てたと言えるポルナレフには貴族では無いというだけで何も無いのか、ルイズはその理不尽に憤慨したが、ポルナレフはその肩を叩いて、 「俺は別に何もいらない。色々訳ありでな…」 と言った。 その言葉にルイズは渋々頷いた。 「それはそうと今夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。この通り『破壊の杖』は戻ってきたし、予定通り執り行う。 今日の舞踏会の主役は君達じゃ。用意してきたまえ。せいぜい着飾ってくるのじゃぞ。」 三人が礼をしドアに向かったがポルナレフは行こうとしなかった。 「ポルナレフ?」 「先に行ってろ。こいつらと話がある。」 ルイズは納得いかなかったが、渋々出て行った。 「何か、私に聞きたいことがお有りの様じゃな…言ってごらんなさい。 出来るだけ力になろう。君に爵位は…ああ、要らないんじゃったな。まあ、せめてもの御礼じゃ。」 「聞きたいことは二つある。一つはこのルーンだ。薄々気付いていたが、このルーンは剣やナイフを持つと何故か反応する…これは何だ?」 「うむ…それは伝説の使い魔の印じゃ。」 「伝説の使い魔?」 「さよう。始祖ブリミルの使い魔でガンダールヴと言う。彼の者はありとあらゆる武器を使いこなした、と言い伝えられておる。 コルベールの仮説じゃったがどうやら本物らしいな。」 「なるほど…だから破壊の杖も扱えたのか。しかし何故あの小娘が俺達をそのような使い魔として召喚したのだ?」 「すまんが、そればかりは分からん。」 「…まあ、いい。それよりだ。あの破壊の杖はどうやって手に入れた?あれは俺がいた世界の武器だ。この世界の技術で作れるはずがない。」 「君がいた世界…ああ、君が言ってた召喚される前の魔法が無い世界か…まあ、話すと長いのじゃが…」 オスマンが言うにはその昔ワイバーンに襲われ危機に陥った所を破壊の杖の持ち主に助けられたらしい。 「その男は?」 「死んだよ。酷い怪我を負っていてな…『元の世界に帰りたい』とベッドで言っていたよ。 彼は破壊の杖を二本持っていてな、それで彼の墓に彼が使った方を埋め、もう一本は宝物庫にしまったのじゃ。」 「そいつが来た方法なんかは聞いてないのか?」 「聞いたのじゃが、本人も分からんと言っておった。すまんな、力になれなくて。」 オスマンがすまなさそうに頭を下げた。 「別に構わない。ただ、俺や亀の様に来た奴がいる…それさえ分かればな…」 ポルナレフは立ち上がると一礼してから退室していった。 To Be Continued...
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宝探しでギーシュが買ってきた地図は五つ。 いちいち細かく言うのも面倒なのでダイジェストで行こうと思う。 まず一つ目。竜の金貨だ。 これは五つ集めると自分が一人増えるらしい。 どういうことなのかは分からない、偏在みたいなもんか? 竜の金貨があるのはダイナソー陸地と呼ばれる場所だ。 陸地ってのは土地名に使うには正しくない気もするが細かい事は気にしないでおく。 そのダイナソー陸地に着き、地元住民から情報を集めていたらとんでもない事が分かった。 竜の金貨はもう無いのだ! 地元住民のYさん(仮名)が言うには突如現れた赤い帽子のひげ男が『便利だから』と全部とって行ってしまったらしい。 もう無い物を手に入れる事ができるわけも無く、だが次に行くには時間がないのでその日はダイナソー陸地に泊まった。 一日目終了。 二日目。 二つ目は青眼の白龍。 これは龍の形の彫刻とかじゃなくて青い目の白い龍を召還できるお札らしい。 キュルケが言うにはこの秘宝は考えられるとしたらサモンサーヴァントを応用したマジックアイテムらしい。 だがサモンサーヴァントには色々と制約があるため、そんなものはまず存在しないとも言っていた。 だが実際に存在しているのだ。この場合は未知の技術か真っ赤な嘘かのどちらかだろう。 それも実際に見てみればハッキリする。 その青眼の白龍が祭られている神殿に着いた。 だが中には何も無かった。 あるのはただの破壊の跡。 鋭い爪によって抉られただろう壁。 堅い尾によって倒れたと思われる柱。 この傷跡をみればここで龍が暴れただろう事を想像するのは容易かった。 少し離れたところにある壁には何か文字が書かれていた。 近くにいたギーシュが読み上げる。 『これが青眼の白龍か!ウワハハハー!すごいぞーカッコいいぞー!』 どうやらこの龍を手に入れたヤツはどうしようもないヤツらしい。 ギーシュが続きを読む。 『龍を一度戻したらもう出て来なくなってしまったのですがどうすればいいのでしょうか? 分かる人は教えてください。もちろん報酬は出します。 レコン・キスタ総司令官 オリヴァー・クロムウェル』 おれ達は次の場所へと向かった。これはほっといても良いや。 三つ目はブリーシンガメン。 これは首飾りらしい。 これがある寺院はオーク鬼が住み着いていたのでそれを倒す必要があり、 それを終わらせ、中を調べてみたのだが見事なまでに何も無かった。 ギーシュはブリーシンガメンを使ってワルキューレを強くするつもりだったらしくちょっと落ち込んでいた。 「やっとクラスチェンジできると思ったのに…」 まあまあ、スターランサーの方が使い勝手は良いしさ、そっちにするチャンスだと思えよ。 四つ目は退魔の剣らしい。 コレを抜けるのは真の勇者だけだ! みたいなことが地図には書いてあるのだが…これは宝の地図と言うよりは観光パンフレットだ。 その証拠に剣が祭られてる神殿には金を払えば普通に入れるし台座に刺さってる剣を抜く事だってさせてくれた。 だがおれにもキュルケにもタバサにも抜けなかった。 それにしてもおれが何も言われず挑戦できたのには驚いた。 最後にギーシュがチャレンジ。 どうせ抜けないと分かっていてもこういうのはワクワクするらしく顔を輝かせている。 そんなギーシュを見ることもなく次の相談をするおれ達。 全く関係ない人たちと思われても仕方ないくらいのスルーっぷりだ。 おれ達がもう遅いし今日はここに泊まろうと決めたところでギーシュが台座から降りてきた。 だが様子が変だ。 表情がポルナレフのAAみたいになっている。 「あ…ありのまま今起こった事を話すよ!」 台詞までそのままだった。 「僕は剣を抜いたら七年後の世界に飛ばされていてその世界は大変な事になっていて僕がそれを救ったんだ!」 ハイハイワロスワロス。 二日目終了。 三日目。 五つ目にして最後は竜の羽衣。 これを身に着けたものは空を飛べるらしい。 だがはっきり言って必要ない。 だって自力で飛べるもん。紙飛行機みたいに舞うだけだけど。 それでも売れば金になる。 そしておれ達は竜の羽衣があるタルブの村までやってきた。 タルブの村はだだっぴろく綺麗な草原があり、のんびりとした所だ。 おれはこの草原の匂いを嗅いだ事があるような気がする。何故かは分からないが。 これが最後でかつ戦闘も無さそうと言う事でみんなもリラックスしている。 おれは使いそうにないデルフを外し、シルフィードに預けた。 キュルケはこうも言っていた。 「ルイズも来れば良かったのに…」 最近のキュルケはルイズの心配をしている。確かにちょっと様子が変だからな。 おれも昨日の夜キュルケに色々と聞かれたのだが、おれはそこまで気にするほどの話じゃないだろうと思っている。 で、おれが他のヤツに相談したらどうだ?と聞くと 「『自分』にも相談したんだけどやっぱり使い魔である貴方も無視できないでしょう?」 と言われた。なるほど、正論だ。 さてそんな風に気分転換に丁度良いタルブの村だが、おれ達は休暇や観光で来たのではなく冒険に来たのだ。 とりあえず話を聞くために人間を探す。 丁度道の向こうから女が来たのでそいつに話を聞こうと近づく、 おれ達貴族が近づいたのを見て、大名行列みたいに脇にそれ頭を下げる。 素朴な感じで明らかに村娘といった娘だが、かなり胸がデカイ。 そして何故だかおれはこいつがメイド服を着ている姿を思い浮かべてしまうのだ。 その理由はすぐに分かった。草原の匂いの謎と共に。 「よう、シエスタ」 その女はシエスタだった。 メイド服を着ている姿を思い浮かべるのもいつも着ているのだから当たり前。 そして草原の匂いはおそらくここがシエスタの故郷だからだ。 匂いってのはそいつが何処に住んでいるかと、何処で育ったかで違ってくる。 だからシエスタの匂いとこの草原の匂いが重なり、前にこの草原の匂いを嗅いだように感じたのだ。 で、次がこの推理をした名探偵イギーへのシエスタの反応。 「イギーちゃん!?」 『ちゃん』付けだった。 いつもはおれが使い魔だからか『さん』なのに。 きっと今までも心の中ではそう呼んでいたに違いない。 シエスタに会ってからの話は早かった。 おれ達が竜の羽衣を探していると言ったら、それはシエスタの家にあるものだがインチキで名前だけの秘宝だと言う事を教 えてくれた。 それでもここまで来たのだし、一応見ておくことになり、 寺院にある実物を見たのだが、これがビックリ! 飛行機だった! 「まったく、こんなものが飛ぶわけないじゃないの」 キュルケが言い、ギーシュも頷く。 「これはカヌーか何かだろう?それに鳥のおもちゃのように、こんな翼をくっつけたインチキさ。」 「……」 そして相変わらず本を読んでるタバサ。 誰一人としてこれが飛ぶとは思ってないらしい。この馬鹿共が、科学を舐めるな。 ちょっと説明しようとも思ったが、今はもっと情報が欲しい。 おれはシエスタに話しかける。 「シエスタ」 「何?イギーちゃん」 「これについてもっと教えてくれ」 シエスタへの質問の結果、これはシエスタのひいおじいちゃんの物で、そのひいおじいちゃんはこれで飛ぶ事ができなかっ たという事が分かった。 そしてひいおじいちゃんのお墓があると言うのでちょっと見せてもらう事にした。 タルブ村の共同墓地の一画に他の白い石でできたものとは違う、黒い石のものがあった。 それがシエスタのひいおじいちゃんの墓だった。墓石には墓碑銘が刻まれていた。 「ひいおじいちゃんが死ぬ前に自分でつくったそうよ。異国の文字で書いてあるから、 誰も銘が読めなくって。なんて書いてあるんだろうね?イギーちゃん」 さっきからちゃん付けが定着してしまっている。言葉遣いももう友達へのものだ。 「海軍少尉佐々木武雄、異界ニ眠ル」 「え?イギーちゃん読めるの?」 「まあな」 話す事や書く事はできないけど読んだり聞いたりなら六ヶ国語は軽い。 承太郎や花京院、それにアブドゥルと一緒にいたせいか日本語とアラビア語も何とかなる。 寺院に戻ると四人が待っていた。…四人? 「おお!イギー君!」 まばゆく輝くハゲ頭、コルベールだ。何でここにいるんだ? コルベールはかなり興奮している。 「竜の羽衣について君は何か知っている、いや解っているらしいね!?」 多分キュルケ達から話を聞き、そしてそう思ったのだろう。 「是非教えてくれ!」 何でおれが…と前のおれなら思っただろうが、 コルベールとはちょっとした協力関係にあるし、これだって立派な機械だ。 これを応用したものを作るとしても作るのはコルベールだ。知識はあったほうが良い。 そんな訳でキュルケとタバサとギーシュとシエスタは今日泊まる予定の、 そしてコルベールが泊まっている(持ち主の家だかららしい)シエスタの家まで案内され、コルベールとの二人きりでの飛 行機講座は開かれた。 飛行機に触れると左前足のルーンが光り、この飛行機の情報が頭に流れ込んでくる。 そして飛行機が飛ぶ原理やこの飛行機の名前はおそらく『ゼロ戦』で今は燃料がないこと等、今わかっている事や推理した ことを話す。 一通りの事を話し終え、日も暮れてきたところでとりあえず今日は終わりにしようって所でコルベールが口を開いた。 「君は確か異世界から来たといっていたね?」 「ああ、異世界から来た」 コルベールは少し考え、話し出した。 「もしかしたら、君は元いた世界に帰れるかもしれない」 コルベールがこの『竜の羽衣』の存在を知ったのはある伝承からだそうだ。 そしてその伝承によると竜は二匹いたらしい。 その竜は日食と共に現れ、一匹は日食へと消えた。 これはつまり日食が何か関係してるという事。 ゼロ戦に乗って日食に飛び込めば…帰れるかもしれない。 「まあ、証拠なんて一つもありませんがね。けれど、可能性は高いと思われます」 元の世界に帰る。 それは、つまり、あいつらにまた会えるかもしれないという事だ。 しみったれたじいさんが車を運転しながら馬鹿話をして、 そのじいさんのケチな孫がそれを聞き流して、 マヌケなフランス人がそれに笑い、 胡散臭い占い師がそれを聞きながらひょろっちい高校生の事を占ったらヤバイ結果が出て、 その横でおれはガムを食べる。 何が楽しいのかなんて今も分からないけど、楽しかった時を過ごせる。 また、あいつらに会いたい。 これは自分がずっと諦めていた事。 でも諦めきれないから無意識の内に別の目標を作った。 それをする事によって忘れられるように、 『国を作る』そんな事犬にできる訳ないよな、常識的に考えて。 最初は神になるとか言ってた事も会ったけどそれだって本気じゃない。言われた側だってただの誇張表現だと思ってるだろう。 それにおれが帰ることで一つの可能性も伝えられる。 確かアブドゥルと花京院もおれと同じく死んだはずだ。 だがおれはこうしてここに生きている。それは普通にはありえない事だ。 だから花京院とアブドゥルも同じように異世界に飛ばされてるのかもしれない、 もしかしたらハルケギニアの平行世界でルイズの使い魔をやってる可能性だってある。 SPW財団ならこの謎について解明しようとするだろう。 それがもし、上手く行ったのなら。 また、あいつらに会えるかもしれない。 これは嬉しい事だ。 だが、おれは何故だか沈んだ気分でシエスタの家に向かった。 家に入るとシエスタの弟達がやってきた。全員まだ小さい。 そしてそいつらはおれを見て 「犬だ」 一人がおれの体を撫で始めた。 「止めろ」 「喋ったよ」 もう一人なで始めた。だから止めろ。 「可愛いね」 三人目。 「でも元気ないよ」 「じゃあ元気付けよう」 残りも含めて全員でおれの体を撫で始めた。 「おい止めろ!」 だがそう言ってもガキ共はおれの言う事を無視しておれを撫で続ける。 「ああ!もっとやさしく」 一人が胸の方に手を伸ばしてくる。 「そこはダメ!ダメッ!ダメッ!ダメッ!」 何本もの手がおれを撫で回す。 「ああ!やさしくして やさしく!」 トドメとばかりに全員が同じリズムで撫でてくる。 「うああああ!ダメッ!もうダメ~ッ!」 To Be Continued…
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第一話 【眠りすぎた奴隷】 第二話 【使い魔フーゴ;主人からの第一指令】 第三話 【”労働基準法違反疑惑”浮上】 第四話 【そいつの名は『ゼロ』】 第五話 【自分からの第一指令:『食事をゲットせよ!』】 第六話 【行進曲は高らかに奏でられる】
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空に輝く二つの月が一本の木を照らし出している 木には一本の剣がロープで吊り下げられていた 「おーい、降ろせー」 剣が喋っている、彼(?)は魔法によって知性を得た剣‐インテリジェンスソードで銘をデルフリンガーという 何故学院の裏庭で木に吊り下げられているかというと、ルイズが鉄をも切り裂くという剣の試し切りがしたいと言い始めた為だ 昼間の武器屋での騒動の後、ルイズは店主に「貴族の使い魔を殺すなんて…」だの「事が公になれば縛り首ね…」だの 様々な文句で脅し付け、店主の持ってきた数々の剣をロハでせしめていた (ルイズが出て行く時、店主は涙目で今にも倒れそうだった、今頃枝振りのいい木でも探しているかもしれない) 「って訳だから、はい、ちょっとぶった切ってみなさい」 ルイズはデルフリンガーを指しながらディアボロに剣を渡す 「うるせー、なにがちょっとぶった切ってみなさいだ、ぶった切られた様な胸しやがって」 デルフリンガーの言葉に額に血管を浮かせながら、周りに置いていた剣を木の方に向かって投げつける 「あっごめんなさい、いや、ちょっと、やめて」 「呪うなら、その口の悪さを呪うがいいわ」 親指を下に向けて拳を振り下ろしディアボロを促す これが本当に鉄をも切り裂くというのならデルフリンガーの運命は風前の灯だが、 適当に振るわれた剣は甲高い音と共に弾かれた 「へへーん、このデルフリンガー様はな、そんななまくらに切られる様なやわな体はしてねえってんだ」 振り子の様に戻ってくるデルフリンガーをディアボロは手で止める これで急に足が動かなくなってとか何かに気をとられている内に後ろから突き刺さると言う事は無い 不意に月が翳った ディアボロが振り返ると全高30メートルはあろうかという巨大なゴーレムがこちらに迫って来ている あれが月の光を遮ったのだ 「おい、危ねえぞ」 デルフリンガーが警告を発する 確かにこのままでは踏み潰されかねない ルイズはとうに離れて此方に向かって剣を回収しろと叫んでいる 急いでこの場を離れようとした時、いつの間にか足元に転がっていた妙な形の石に足を取られ転んでしまった 倒れた後に見えたのは巨大な足の裏だった ■今回のボスの死因 巨大なゴーレムに踏み潰されて圧死 ■おまけのデルフリンガー ボスと一緒に踏まれた時にへし折れて死亡?
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「…うぐぇあ…気持ち悪い……二日酔いか…?」 ポルナレフはソファから身を起こすと、よろよろと立ち上がった。 「お、ようやくお目覚めか相棒。」 「ん…ああ…あ?」 ポルナレフが首を傾げる。 「いつの間に亀の中に戻った?確かシエスタと酒を飲んでて…?」 デルフがカタカタ震え出した。 「どうした?」 「な、なななななんでもないぜ相棒。そ、そそれより早くしねーと娘っ子にまた亀取り上げられるぜ!」 「あ、ああ。」 ポルナレフはデルフを掴み取った。 「え、あ、相棒!?」 「昨日は迷惑かけたしな。それにまあなんだ。レイピアは持ち運びがな…」 相棒…!とデルフは涙した。目なんか無いけど。 (あ、あの犬ゥゥゥゥ!!) 私は亀の目の前でポルナレフが出て来るのをいまかいまかと待っていた。 (ダンス誘ってやったのに終わったらすぐに御主人様を無視してメイドと逢引ですってぇぇぇ) ちなみに昨晩の騒動の後、水のメイジによる治療を受けられず応急処置しか受けれなかった(今日の内に治癒魔法を受けに行くが。)ため、左腕骨折に加え、頭に包帯、身体のあらゆる箇所にガーゼが貼られている。いわゆる『名誉の負傷』って奴だ。 (何が「俺は帰らなければならない。だが、それまではお前の使い魔だぜ。」よ!思いっきり違う娘に着いていってんじゃない!) ポルナレフの自分に対する態度が全然気に喰わなかった。フーケの時も私を差し置いて他の二人と共に退却を提案した。 それでも見捨てず助けてくれたはいいが、御主人様である私と踊った後すぐに違う女、それもツェルプストーじゃないだけマシだが、メイド、すなわち平民と飲みだしたのである。 貴族である自分が誘われず何故あの平民が誘われなければならないのか(誘ってないbyポルナレフ)そのことが無性に腹が立った。 しかもその平民とキスをしようとしたのである。これには完全に頭に来た。別にあいつが好きという訳じゃないが、平民ごときに負けたのが悔しかったからだ。 気付いたらテーブルを二つ飛び越え、メイドの後頭部に目掛けて飛び膝蹴りを喰らわしていた。 ゴシカァン!という音と共にメイドがポルナレフと正面衝突した。メイドはゆっくりと立ち上がると、その怒り、羞恥、酒で真っ赤にした顔をこちらに向け、 「いいキックしてるぜッ!このアマッ!」 と挑発してきた。私も負けじと 「かかってきやがれッ!」と挑発仕返した。 その時私はワクワクしていた。メイドの最も強い部分が光り輝いて見えた気がした。 「いくぞ!」「私の方が!」「「最強という事を証明してくれるッ!」」 …今思い返せば最後だけ何かおかしかった気がする。 その後、私とメイドはバルコニーを破壊し尽くすまで闘った。終わった時には私もメイドも満身創痍だったし、私のドレスもメイドの服もボロボロだった。ただ、亀とポルナレフはギーシュがワルキューレを使って助け出していたため無事だった。私はギーシュに感謝した。 「よいしょ」ドゲシャ「ガミャッ!」 私は亀から出て来たポルナレフの頭を踏み付けた。ぐりぐりと。 「や、やめろ小娘ッ!」 「そんなことより御主人様に言うことがあるでしょ?ほら早くしないとどんどん強くなっていくわよ。」 「な、何の事だ!」 「あー、相棒。ひょっとしてあのメイドのことじゃね?」 「メイド…シエスタか?だがシエスタがどうした!?」 「全く、相棒はあれかい?女心が分かんないのかい?」 剣が呆れたように言った。ていうかようやく出番与えられたのね。と、そこに コンコン。 「すいません、入ってもよろしいでしょうか?ミス・ヴァリエール。」 あのメイドがやってきた。 とても歯痒い。何故ポルナレフさんは私の気持ちに気付いてくれないのだろうか? 彼がメイジであるギーシュ様をナイフ一本で倒した時、私は彼に惹かれた。メイジを倒した平民としてでなく、可能性としてでもなく、私のような何の力も持たず服従するしかない一介のメイドの為に命を省みず闘ってくれた『男性』としてだ。 彼は私よりずっと年上だろうから親や周りも反対するだろうが、それでも構わないと思っている。 それほどまでに憧れ、慕っているのに…彼は気付いてくれない。 だから常日頃一緒にいるミス・ヴァリエールが羨ましかった。御主人様と使い魔という関係でも私よりずっと長く彼と一緒にいられるのが羨ましかった。 そしてフリッグの舞踏会で二人が踊っているのを見て、ついに我慢出来なくなった。 私は同僚の子に無理を言って仕事から抜け出し、彼の元に行った。 そして… ここから記憶が無い。ただ起きたら部屋にいて頭痛がしたことからワインを飲んだに違いない。そうだとすると何かやらかしてしまったかもしれない。 そう思うとすぐにメイドの共同部屋を飛び出して謝りに行く事にした。 「ミス・ヴァリエール?いらっしゃいますか?」 「ちょっと待ってなさい。部屋を片付けるから。」 中から返事が返って来た。心なしか怒っているように聞こえる。やっぱり昨日何かやってしまってたんだ。 「あんたの愛する平民が来たわよ。犬。ああ、御主人様の部屋に呼んでまでイチャイチャしたいだなんて、どれだけ性欲あましてるんだか。」 ルイズは見下すように言った。いや、確かにシエスタはいい娘だが、別に愛しては…ってデルフよ、なぜ震えている? 「…何か貴様勘違いしているな?俺はシエスタと恋仲ではない。」 「嘘おっしゃい。だったら何で御主人様の見てる前で逢引したり、今もこうやって来てるじゃない。そんな犬にはお仕置きが…」 酷い言い掛かりだ。両方とも身に覚えが無い。あのギーシュじゃあるまいし、そのような事は絶対にしないはずだ。 「何も聞く気はないようだな…この小娘が…ッ」 「何とでも言いなさい。でも…そうねぇ『私が悪うございました。許してくださいまし、私の美しい美しい御主人様』とでも言ったら許してあげようかしら。」 「いい気になりおって…ッ」 「あー?聞こえないわよ?ほら早く言わないとこんな姿をメイドに見られるわよ?」 ぐりぐり更に踏み付けてきた。こうなったらやるしかない。 「…ゼロの癖に…」 腹に力を込める。 「この期に及んでまだ強がる気?阿呆ねぇ…まったく、おたく阿呆ねぇ…」 「生意気だぞッ!小娘がッ!」 俺は身体を海老のように反らせ、亀の中にあった足でルイズの身体を蹴り飛ばした。対メイジように身体を鍛えといて良かった。 「キャッ!」 ルイズの足が離れた隙に俺は走った。目的は窓。 「チャリオッツッ!」 窓をチャリオッツで切り裂き内側に倒す。外に誰かいたらやばいからな。 窓から飛び出すとデルフを抜いてチャリオッツの剣と共にそのまま壁に当てる。摩擦により落下速度を落とすためだ。 ガリガリと盛大に音を鳴らして地上に降り立つとすぐに走った。行き先は走りながら決めよう、と考えると何かにぶつかった。 「な、こんな所に壁が!?」 「壁じゃない!僕の使い魔のヴェルダンテだ!…ん?その声はポルナレフかい?」 この声…確かどっかで聞いたんだが、誰だっけ? 「えーと…プッチ?」 「違う!ギーシュ!ギーシュ・ド・グラモン!忘れたのかい!?昨日助けてやったというのに…」 「昨日…すまない、全然記憶に無い。昨日何があったんだ?」 「本当に覚えてないのかい?あれほどの惨事を?」 「ああ。シエスタと酒を飲んでる所までは覚えてるんだが…そこからが…」 ああ、とギーシュは天を仰いだ。あれを自分から言えというのか始祖ブリミルよ、とだけ言うと、ギーシュは丁寧に教えてくれた。 「…というわけだ。後は自分で何とかあの二人を抑えたまえ。」 それだけ言うと笑いながら去って行った。 「…デルフ、何故教えなかった?」 「だって恐かったから。」 「…」 「昨日はすいませんでした。ミス・ヴァリエール。」 メイドは入って来るなりいきなりそう言った。 「はあ?」 訳が分からなかったので話を聞いてみると昨日は酒に酔ってたらしく、そのために無礼な事をしてしまったと謝りに来たらしい。別にポルナレフに呼ばれたり、会いに来たという訳では無いみたいだ。 しかも本人いわく自分から一緒に飲もうと誘ったらしい。なんだ、全て私の勘違いじゃないか。また謝らなくちゃ…その前に探さないと! 「シエスタだっけ?頼みがあるの。一緒にポルナレフを探してちょうだい。」 「え?あ、はい!」 私とメイドは学院中を探しだした。 「相棒、何処向かってんだい?」 「厨房だ…あそこならルイズも分かるまい。」 「そんなに上手くいくかねえ?」 厨房までもう少しで着く所で見つかった。 「ミス・ヴァリエール!いました!」 いきなりの大声にギクリとし、後ろを振り向くとこちらを指差すシエスタと猛然とした勢いで突っ込んでくるルイズが見えた。 「ほら行かなかったw。」 「笑うな。」 パチンとデルフを鞘に収めると降伏するつもりで両手を挙げた。自分の直前でルイズが停止する。 「はぁ、はぁ、一体何処に行ったと思ったらこんな所にいたの…」 「ふん。今更何のようだ?何度もいうが俺は…」 「まったく、少しは弁明させなさいよ…」「?」 「あの娘から聞いたわ。あんたは本当に何も悪くなかったようね。」 おいおい今更か。 「だから…あーその…ごめんね?」 「え…ああ。」 正直、此処まで勘違いしやすい主人も考え物だ。簡単な話でも相手の主張を認めないから此処までこんがらがってしまう。だが素直に自らの過ちを認めた時の謝り方は、どこかかわいらしいものがある。娘みたいな感じの、がな。 そんな自分達をシエスタは嫉妬に駆られた目で睨みつけていて、デルフはその視線にまた震えていた。 ああ、明日からがまた不安だ。誰か俺の女難の相を取り除いてくれるスタンド使いの方、待ってます。 To Be Continued...